★先頃(2021年6月26日癌のため)惜しくも世を去った本邦モダン・ジャズ・アルトサックスの第一人者:土岐英史(1950年兵庫県神戸市生まれ、2021年東京都で死去)の、本盤は、人気近作「The Guitar Man」と同じ顔ぶれ、即ち、関西ジャズ界の重鎮=大ヴェテラン・ギタリスト:竹田一彦(1936年奈良県天理市生まれ)をフィーチュアした、宮川純(org)&奥平真吾(ds)とのオルガン・カルテットによる、アルバム録音の前日=2020年3月5日、京都のRAGで行なった公演の模様を捉えたライヴ音源のディスク化。
★力強いドライヴ感やパンチに溢れつつも一音一音を丁寧に折り目正しく吹き鳴らすアルトサックスの、敏活でダイナミック、それでいて泰然自若の落ち着きや余裕を自ずと有したブルース・フィーリングもたっぷりのイナセげ吟醸ブロウが、朗々凛々そして颯爽としたシブ清やかな、抜群に美味しい華を成し、一方、ちょっとモゴモゴとスモーキーにくぐもったトーンで幾分かラフな、気ままにつぶやきかけてくるが如き翳り深いアーシー&アンニュイ節をマイペースで超然と紡ぐギターも、燻し銀的魅力をじんわり放ってしっかり座をさらい、また、おぼろさと歯切れよさが表裏を成した音色で中々威勢よく敏捷に立ち回るオルガンのソウルフル・プレイも、熱いガッツみなぎった勇み肌の個性を振りまいて好もしく彩りを添えた、全体を通じハード・バピッシュなソウル・ジャズ、オルガン・ジャズの正統然たる直球熱演が横溢して、コクも十二分にスカッと昂揚させてくれる会心打内容。
★ブルース歌謡的な粋な美旋律性と、エッジの効いたキレのあるシャープなスイング感、を変らずキモとした、ごく親しみやすく取っ付きやすい大衆派エンタテインメントを徹底して志向するダウン・トゥ・アース&メロディアスなテイスティー・グルーヴィー快演!、が伸び伸びとおおらかに展開され、奥平(ds)のダイナミック・パワフルでいて結構芸の細かい、小回りの利いた鋭敏で精緻な立ち働きもグループ・サウンドのノリとスリルを的確に高めて、頼もしいグルーヴ・オーラを堂々放ち続ける小気味のいい道程の中で、土岐(as)以下銘々の腰の据わった揺るぎなく悔いなき練達のアドリブ奮戦が、実に芳醇で晴れ晴れとした盛り上がりを、豊作ぶりを見せて全くゴキゲンだ。
★土岐(as)の、一貫してキリッと精悍軒昂でイキのいい、「歌心とブルース・スピリットの泉」といった感じの凛々しく背筋も伸びた無駄なくムラなきファンキー・バピッシュ咆哮が、豪快そうでありつつ何げにバッチリ構成された劇的で雄渾かつ鮮麗この上なき冴えを、キレを示していてとりわけ傑出しており、それとは対照的にちょっとダルでレイジーな息遣いのもと不透明に、訥々と頽廃的なブルージー小唄を余裕で歌い、ここぞのクライマックスではウェス似のホットなオクターヴ技を炸裂させたりもする竹田(g)の、終始悠々と構えた風なシブすぎる活躍も、醸熟の旨味をもってさすが軽々と拮抗、加えて宮川(org)の、時に粘っこかったり時にスケール雄大だったりのエモい攻勢がまた"こってり効果"満点に魅力を際立たせていたりと、個人プレーの見せ場は極めて充実している。
1. C Minor (H. Toki)
2. Everything Happens To Me (M. Dennis)
3. On The Trail (F. Grofe)
4. The Guitar Man (H. Toki)
土岐 英史 Hidefumi Toki (alto saxophone)
竹田 一彦 Kazuhiko Takeda (guitar)
宮川 純 Jun Miyakawa (organ)
奥平 真吾 Shingo Okudaira (drums)
2020年3月5日京都"RAG"でのライヴ録音
レーベル:
Days of Delight
在庫有り
国内制作CD
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