王立ストックホルム音楽大学に学び、フレードリク・ヌーレーン・バンドやブルーハウス・ジャズ・オーケストラ、ノルボッテン・ビッグ・バンドといった第一線花形グループのレギュラーとして辣腕を揮う他、自己のカルテットやダン・ユーハンソン(tp)との双頭クインテットでも精力的に演奏活動&アルバム発表を行い好評を得てきた、スウェーデンの次世代を担う正統派モダン・テナーサックスの実力者:マグヌス・ドーレルード(1982年スウェーデン-ヴェルムランド県カールスタード生まれ)、の主導する新生サックス・トリオ=Trio Circleのアルバム第1作。低く太く重く唸る、スタンスのしっかり固定され安定したテナーのダーク&メランコリックな憂歌を歌い上げる感じの、ハード・ドライヴ感に溢れながらソフト・スムースなまろやかさ・たおやかさも自ずと備わった、ダイナミックかつメロウなビタースウィート風味のメロディック・プレイが陰影深く余情豊かでコクのある、泰然とした映えを見せ、一方、温もりある人肌感もたっぷりに朗々と滑舌よく唄いに唄う中々小回りの利いたベースや、空をシャープに斬り刻みながら勢いよくパンチ・キックもカマしてくる芸達者なドラム、らのツボを心得つつも十二分に個性を発揮した助演もばっちりテイスティー・グルーヴィー&フレッシュ・スリリングに魅力を際立たせた、全般に武骨な雄々しさと微妙なデリカシーorニュアンスがナチュラルに共存した、独自のスウィンギン世界に美味しく浸らせてくれる会心打内容。現代硬派サックス・トリオの正統らしい、重厚でゴツく適度に荒削りな風合いもある質実剛健のストロング・スイング熱演がストレートに、そして簡潔に展開されるが、主役:ドーレルード(ts)の、ロリンズやジョーヘンの流れを汲んでいたり広義的な意味でコルトレーンの影響下にもあったりと、タフ&パワフルな武勇派テナーの典型を示した逞しき側面と、それとは表裏を成す恰好で、ちょっとけだるく脱力したレイジー・スモーキーな流線形っぽさや柔らかみ、或いは北欧特有の「哀愁のフォーキー・スピリチュアリティ」が顔を出すところも多々あって、そうしたドーレルードの個性のあり様、バランスの取り様が得難いユニークな妙味ともなっていて、大いに新鮮な気分で雄渾の邁進コースを愉しませてくれる。ドーレルード(ts)の、骨太く隆々げな咆哮をドッシリ腰を据えて勇猛に轟かせたり、粋な吟醸的ブルージー節を精悍に繰り出したり、かと思えば「大男の嘆き」っぽいちょっと朴訥な憂愁フレーズをしみじみ唄ったり、といったごくストレートアヘッドなド真っ当ハード・バッパーたる豪快至極の行き方で先ずは鉄板の(スケールもデカい)極厚グルーヴとこってり芳醇な旨味を安心して満喫させてくれ、並行して、仄暗く幾分か内省的でもある今日流スカンジナヴィアンらしいアンニュイ・メランコリーの音景色へとムーディーに、やや蠱惑的に引き込んでもくれる、その滑脱で表情に富み深い包容力めいた頼もしさもある吹鳴キャラは誠に味わい豊かで説得力も満点。度々浮かび上がっては饒舌な歌謡者ぶりを発揮するバッケンルート(b)のソロ奮戦も好アクセント。
01. Prelude (Magnus Dölerud)
02. Contours (Magnus Dölerud)
03. Nardis (Miles Davis)
04. Sober (Magnus Dölerud)
05. U.M.M.G.(Billy Strayhorn)
06. Bright Mississippi (Thelonious Monk)
07. Evelyn (Rolf Ericson)
08. If You Could See Me Now (Tadd Dameron)
09. Itʼs All Right With Me (Cole Porter)
10. Broadway Blues (Ornette Coleman)
*Trio Circle トリオ・サークル:
Magnus Dölerud マグヌス・ドーレルード (tenor saxophone)
Hans Backenroth ハンス・バッケンルート (bass)
Oscar Johansson Werre オスカル・ユーハンソン・ヴェッレ (drums)
2021年スウェーデン作品
レーベル:
Prophone
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