★日本のフリー派トランペットの先駆者の一人(関西での活動を経て1960年代初頭に東京へ拠点を移し、更に1974年以降は仏パリを本拠として活動した)であった鬼才:沖至(1941年兵庫県神戸市須磨区生まれ、2020年フランスのパリで死去)の、本盤は、川下直広(vln,ts)&波多江崇行(g)とのトリオによる、2017年9月8日鹿児島県奄美市喜界島のライヴハウス「サバニ」での白熱した公演の模様を捉えた実況音源、の初ディスク化。
★チェンバー・テイストとミュゼット〜ジプシー・ミュージック色が渾然一体となったような、またちょっと異形な怪しさも垣間見えるヴァイオリンの鳴動が中々鋭く響き渡る中で、トランペットまたは笛の、基本はあくまで「スピリチュアル」な、情緒性・情動性をしっかりと、切々と表す明晰でストレートそして豪快なる咆哮が味わい豊かに轟き、その流れの延長線上でごく自然にシュールもしくはアブストラクトな領域へ踏み込むところも多分にあるが、一貫してある種の「魂の叫び」めいた力強いエモーションや哀愁、或いは吟遊詩人っぽいおおらかな牧歌性、といった要素が揺るぎなく確固と肝を成し続ける、その雄渾でスケール大きく懐の深い吹鳴が、シャープでいてこってりコクのある醸熟の華を堂々と飾り、
一方、端麗優美な抒情指向のメロウ・ムーディー・プレイをしっとりと紡いでいたかと思えば、より幾何学的でノイジーな抽象性濃いフリー・インプロにも滑脱自在に転じる、終始細やかで爽涼感漂うギターや、太く重いトーンでブオブオ唸り吠える武骨なテナー、らも各々鮮烈濃厚に魅力を際立たせた、全編ストロング&エキサイティング(&スリリング)な感動と興奮溢れる展開で、聴く者はひたすらフレッシュに圧倒される高密度の会心打内容。
★幾分か怪異で奇天烈な面もあるものの、本質としてはあくまで分かりやすい「スピリチュアル・ジャズ」の体を成した、変幻にして人情味たっぷりの少々荒っぽく激動流転する波瀾万丈の道程が続き、沖(tp,笛)の、肩の力を抜いた自然体調子で結構豪放磊落に得意技の数々を遺憾なく揮いきる、さすが十二分に鍛え抜かれ、なおかつ悠然&伸び伸びとした縦横無尽のインプロヴィゼーション、=根は「詩人」気質の歌心溢れるリリカルなアプローチ、がとりわけ傑出して清新・豊饒この上なしの絶好調ぶりを顕示している他、わりかしマイペースで地下実験に勤しむかのような波多江(g)や、ドスを利かせて重厚に迫る川下(ts,vln)、らの活躍もアザやかに冴えて、さりげなくコントラストにも富むカラフル&テイスティーな充実した音世界が創出されている。
1. Oogomadara オオゴマダラ
2. Luisiana Red ルイジアナ・レッド
3. Round About Midnight ラウンド・アバウト・ミッドナイト
4. Hymne à L'Amour 愛の讃歌
沖 至 トリオ Itaru Oki Trio:
沖 至 Itaru Oki (trumpet, 笛)
川下 直広 Naohiro Kawashita (violin, tenor saxophone)
波多江 崇行 Takayuki Hatae (guitar)
2017年9月8日鹿児島県奄美市喜界島のライヴハウス「サバニ」でのライヴ録音
レーベル:
Off Note (Aurasia)
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