1940年代からアメリカで様々な演奏活動を行なった後、71年にオランダへ移住し、以来同国の主流派ジャズ・シーンで演奏活動を続ける傍らハーグやマーストリヒトの音楽院でジャズ・ピアノ講師も務め、LimetreeやMunichに優れたトリオ作品を残している(またBlue Jackからルード・ブリンク-tsとの双頭カルテットによるレア・ライヴが発掘ディスク化された)手練のピアニスト:アーヴ(アーヴィン)・ロクリン(1926年米オハイオ州セイレム=Salem生まれ)の、本盤は、ベース&ドラムとのトリオによる1982年5月蘭録音の円熟傑作「Line for F.P.」(Munich BM 150243)の世界初CD化。硬質堅固で輪郭もクッキリした鋭角的キレのよさを呈し、と同時により滑らかで軽涼な潤いっぽさや玉転がし感も随所に覗かせる、一本芯の通った何とも味わいあるストーン・タッチのピアノが、親しみやすく取っ付きやすい小粋な歌心もしくは詩的ロマンティシズムに溢れ、また硬派で渋いバップ・ピアノの正統然たるハード・アクションの迫真性やグルーヴ力そして充分吟醸されたブルース由来の濃い旨味、も潤沢に掛け合わされた、何げにバランス絶妙な躍動的リリカル・エンタテインメントの鑑!とも云うべきメロディック・スウィンギン・プレイを溌溂と小気味よく紡いで、スッキリ清々しくも深い滋味ある華をごく軽やかに成した会心打内容。旋律美や歌謡性とスイング感を何より大切にし、伝統的バップ・スピリット&ブルース・フィーリングも自ずと豊富に備わった、正々堂々直球勝負の大衆娯楽指向な抒情派グルーヴィー快演、が嬉々として歯切れよく展開され、1曲1曲は比較的手短にまとめられたトントン拍子に進む好テンポの、そしてインティメイトな和気と鷹揚な開放感が共存する風通しもよさそうな道程の中で、ベース&ドラムのキッチリとツボを心得た堅実にして芸の細かい機動的サポートに頼もしく支えられ、また刺激を受けて、ロクリン(p)の、明るく晴朗でスカッと爽やかな真っ当この上なきアドリブ奮戦が、チョチョイのチョイ的軽み&飄々さをもってあくまで簡潔に、かつ余情豊かに冴え渡っていて見事。→大雑把に捉えるならエヴァンス調とファンキー系ハード・バップ路線の折衷、とでも云えそうな、バネを利かせてダイナミックに跳ね躍りながら耽美的でロマンティックな詩人体質の歌いっぷりを見せ、並行して結構ソリッド&スクエアーなカッチリした昔気質の殺陣ワザや寛ぎ小唄っぽいイキでイナセなアーシー節をも作為なげに次々挿入、トータルとしては中々エレガントな洗練味やポエティシズムと昔ながらの瀟洒味・洒脱さや気さくさがナチュラルに渾然一体化した、極めて明快平易でいてさりげなく幽玄深い、誠に風流な弾鳴キャラが軽々と確立されていて、さすがの熟成度・醸熟具合を感じさせる。ウナります。
01. ビューティフル・ラヴ
02. チェロキー
03. イズント・イット・ロマンティック?
04. エデンの西
05. ライン・フォー・F.P.
06. アイル・ネヴァー・スマイル・アゲイン (solo)
07. アイヴ・ネヴァー・ビーン・イン・ラヴ・ビフォア
08. テンダリー
09. ウィズ・ア・ソング・イン・マイ・ハート
10. イースター・パレード
11. ブルー・イン・グリーン
Irv Rochlin アーヴ・ロクリン (piano) (vocal on 06)
Victor Kaihatu ヴィクター・カイハツ (bass except 06)
Eric Ineke エリック・イネケ (drums except 06)
1982年5月23日オランダ-ヘールスム(Heelsum)のFarm Sound Studio録音
*原盤:Munich Records BM 150243
レーベル:
Solid ウルトラ・ヴァイヴ(Ultra-Vybe)
在庫有り
国内制作・最新リマスター限定生産CD
日本語解説書き下ろし、オリジナルジャケット使用