★過去の2作品がいずれも好評だった、ベースの重鎮:金澤英明(1954年北海道札幌市生まれ)と飛ぶ鳥も落とす破竹の快進撃を続ける個性派(にして娯楽派)ピアノの才媛:栗林すみれ(1986年生まれ)、のデュオ・プロジェクト=二重奏のアルバム第3弾が登場。
★前2作と同じく今回も北海道のパームホール蘭越での録音。
★端正できめ細かくニュアンスに富み、と同時に歯切れよく豪快な勢いも備わった、透明感と潤いを豊富に湛える水晶の如きタッチのピアノが、抑制を利かせて慎重に音を選びながら切々と哀愁あるいは深く安らいだ情景を優しく、センシティヴに描き出し、かと思えばよりピッチを上げてバップ・イディオムに則りつつ少々荒削りな硬質アクション節を炸裂させたりと、程好くメリハリの効いた表情豊かなメロディック・プレイで煌めくような瑞々しい華を成し、一方、決して出しゃばることなく先ずはサポート役をガッチリ手堅く担い、が、豊饒なる歌心をフル発揮して雄弁に、多彩にしっかり自己主張もする、太く重厚でスプリング力満点なベースのウネり跳ね技も、頼もしいコク旨な魅力を際立たせた、全体を通じ落ち着いていながら機敏な躍動感を欠かさず、ノリよくもホッと安心できるハートウォーミングな抒情世界に仕上げられている。
★インティメイトな和気あいあいムードと、背筋の伸びた巧まざる緊張感、とが自然に一体化した、深々と寛いでいながら快活にグルーヴしている基本はバラード中心の極めてメロディアスな、親しみやすいリリカル演奏が流麗滑脱に展開され、大方はマイルド・テンダーでスピリチュアルな柔和め・穏やかめの浪漫溢れる行き方がメインを成すも、より動きのある、立ち回りの迫力やスリルに幾分か重点を寄せたアプローチや、一部ではちょっとアブストラクトな自由即興性を強めたわりかし遊撃猛襲型のトラックもあったりと、上手い具合に一本調子にはならずフレッシュなサスペンスも絶えない、張りのある半劇的道程の中で、両者の、一定の節度や制御力を保った上で伸び伸びとリラックスしつつ練達のワザを揮ったアドリブ奮戦が、バツグンの鮮度で冴え渡って素晴らしい。
★栗林(p)の、メロウ&ロマンティックでちょっぴり儚くアンニュイな風合いもある耽美指向もしくは文学的傾向と、硬派で粋渋でストレート・グルーヴィーなハード・バップ・ピアノ然とした真っ当さ、が自ずと細密に掛け合わされた含蓄深く余情豊かな温厚さも漂う語り口、にまた一段と磨きのかかった輝きが感じられて卓抜で、かたや金澤(b)の、ちょっと達観したように作為なげな自然体の、流れに身を任せる感じの波打ち様に悠々と終始する熟成度十二分(包容力も一杯)の芳醇至芸も◎。
1. If Tomorrow Never Comes (栗林すみれ)
2. 花の街 (團伊玖磨)
3. A Blessed Day (栗林すみれ)
4. SABI (金澤英明)
5. Song For Che (Charlie Haden)
6. Keep A Beautiful Tree In Your Heart (栗林すみれ)
7. Sketch No.4 (栗林すみれ)
8. 慈しみ深き What A Friend We Have In Jesus (Charles Converse)
9. Giveth And Taketh Away (栗林すみれ)
栗林 すみれ (piano)
金澤 英明 (bass)
2021年6月 パームホール蘭越(北海道磯谷郡蘭越町昆布町)録音
2021年日本作品
レーベル:
Somethin' Cool
在庫有り
国内制作 W紙ジャケット仕様CD