★本邦ウェス・モンゴメリー派モダン・ギターの第一人者:宮之上貴昭(1953年生まれ、東京都世田谷区出身)の、今回は、岡淳(ts,fl)、吉岡秀晃(p)、井上陽介(b)、大坂昌彦(ds)、といういずれもJ-Jazz界を代表する強力なオールスター体制のクインテットによる、円熟にして清新な自作曲集。
★鋭利なキレと潤いや滑らかさを兼備し、頑強そうな固い張りをも湛えた、一音一音から濃厚な醸熟テイストを放つ鉄板トーンのギターが、ホット&アーシーに威勢よく勇ましい黒味あるアクションをキビキビ繰り出して何ともイキな華を成し、一方、太くしなやかに豪快朗々と渦巻きウェイヴを描く歌謡性満点なテナーや、律儀一徹に職人気質っぽく伝統的「バップ+ファンキー」語法の躍動ワザを超然と紡ぐピアノ、らのそれぞれ全く揺るぎなく伸び伸びと得意の練達芸を揮いきる嬉々溌溂げな立ち働きも、ばっちりテイスティー・グルーヴィーに確たる魅力を際立たせて頼もしく拮抗した、全編色彩感とウマみ豊かなギュギュッと中身の詰まった極めて密度の高い敢闘の連続で、大いに沸かせる充実内容。
★井上(b)や大坂(ds)の安定律動力抜群にして機略縦横なる遊撃性にも長けた、大船に乗っているようでありつつしっかり芸の細かい必殺の的確サポート、にガッチリ支えられながら、宮之上(g)、岡(ts)、吉岡(p)らがひたすら活き活きと愉しそうに泳ぎ回り、躍り回る、歌心とブルース・フィーリングに満ち満ちたソウル・ジャズ寄りのハード・バップ(しかもレギュラー・グループであるかのように実によくまとまっている)、的な明朗娯楽指向の驀進が剛健雄渾に展開され、銘々の、肩肘張らぬも悔いを残さず全力全霊でスカッと燃える、徹底して親しみやすい大衆的エンタテインメント性に溢れたアドリブ奮戦が晴れ晴れとおおらかに、殊の外ハートフルな豊作ぶりを呈してゴキゲンだ。
★宮之上(g)の、例によってウェス型の熱く鋭敏なオクターヴ奏法をここぞの切り札として一撃必殺の胸もすく興奮を齎してくれるが、勿論それ一辺倒でなく、クリスチャン〜ケッセル系あるいはファーロウ〜バレル筋っぽくもある渋〜い燻し銀の趣漂う硬質殺陣風の純バップ・フレージングや、ベンソンやグリーンに接近したファンク感あるダウン・トゥ・アースな吟醸節、といった辺りにもこれまたアジな真髄をシカと感じさせ、その安定して誠に芳醇なコクを振りまき続けるイナセ肌の活躍には、さすが十二分に熟成された風格そして説得力があり卓抜。
★幾分か泥臭くソウルフルにタフガイ然と肉厚かつスムースな豪放ダイナミック・ドライヴィング咆哮を轟かせる岡(ts)の、グリフィンやロリンズ(もしくはデクスター?)の影もチラつく「ド真っ当なハード・バップ・テナーの王道」たる直球マイルド・メロディック・プレイ、並びに、骨太い堅牢タッチで立ち回りの型を粛々と遵守した「バップさ格別」のスクエアー節や、寛ぎアクション小唄とも云うべき小粋にして熱量の高いファンキー・フレージング、をあくまで悠然とマイペースで綴る吉岡(p)の全き正攻法な邁進、も各々デリシャス・スウィンギンこの上なく好インパクト。
1. Nigeria
2. Elle
3. Confliction
4. Mellow Hometown
5. Blues for T & M
6. ASAMOYA
7. Rope-a-dope
8. Do! doing
宮之上 貴昭 Yoshiaki Miyanoue (guitar)
岡 淳 Makoto Oka (tenor saxophone except 6) (flute on 6)
吉岡 秀晃 Hideaki Yoshioka (piano)
井上 陽介 Yosuke Inoue (bass)
大坂 昌彦 Masahiko Osaka (drums)
茨城県水戸市、YPM Studio録音
2021年日本作品
レーベル:
YPM
在庫有り
国内制作CD
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