★80歳を越えてもなお益々意気軒昂にチャレンジングな前進を続ける、テナーサックスの孤高の詩人:チャールズ・ロイド(1938年テネシー州メンフィス生まれ)の、今盤は、ここ最近の主力ユニット:The Marvels、=ビル・フリゼール(g)らとの5人組、によるアルバム3作目。
★ふくよかな丸みと弾力感を湛え、同時にキュキュッと鋭く絞ったような硬質な風合いもあるテナーが、徒然気ままな一筆書きスケッチに嬉々として興じる風な、或いはちょっとルーズにヨタつきながらクダを巻く感じもある、終始リキみなく自然体で伸び伸び&朗々とおおらかな歌謡フィーリング一杯のインプロヴィゼーションを滑脱に紡いで、実に懐深くもテイスティー・グルーヴィーな熟成度満点の華を成し、一方、ある時はマイルド・フォーキーに安らいだ詩情を歌い、ある時は怪しく不敵に生々しいサスペンス渦巻く暗躍を見せるギターの瞬発力ある立ち回りも、的確に間隙を埋めながらばっちりデリシャスな濃い存在感を放って悠々たる拮抗を示した、全体を通じ作為なげな流浪の遊泳気分と巧まざるドラマティックなストーリー的構成力とが、ごくナチュラルに融和して何とも絶妙なる、スリリングかつ旨味こってりの深遠世界が創出された、さすが匠の充実内容。
★オーネットの陽性面を彷彿とさせる開放感十分の流麗スインギー即興大会があったり、現代ポスト・バップの典型らしいリズミカルなハードボイルド・アクションがあったり、カントリー・フォーク的なアメリカの原風景っぽさの仄めく牧歌調があったり、妖しく不穏に舞い躍るファンク・グルーヴ路線があったり、かと思えばゆったり&しっとりとしたスウィート・テンダーな耽美的ロマンティック・バラードがあったり、アフロ〜ラテン系統のパッショネートなダンサブル・ナンバーがあったりと、アプローチはヴァラエティーに富むが、全編を揺るぎなく貫くのはやはり、ロイドとフリゼールのコンビネーションならではの「幽遠な桃源郷」を望むが如き、ちょっと達観したようでもある柔和で風流な、そしておぼろに霞む墨絵っぽい世界に聴く者を誘引する独自の滑らかなロマンティシズム表現、であり、そうした、律動的ノリのよさと不思議にたゆたう浮遊感覚が一体化した心地よい道程の中で、ロイドの衒いなく淡麗にスイスイ筆を滑らせてゆく自ずと抑制も利いた軽やかなアドリブ妙技、練達の語り口が余情豊かに飄々と冴え渡っていて、全く見事。
→やや無欲恬淡に粛々と気の向くままスムース・メロディック節を軽みをもって綴り、後には何とも云えぬ幽玄・雅趣が残るという、極めて円転滑脱でいて含蓄に富んだその吹奏術・文脈展開は鮮麗この上なく、かたやフリゼールの、ロイドと同じく過度な作為は排し自然体で悠然と流れるように歩を進めるも、幾分か技巧的に創意工夫を凝らした「策戦」も適所に垣間見せて、上手い具合にコントラスト効果・アクセント効果を齎して見せる役者ぶりもこれまた卓抜だ。加えて、驚くほどのきめ細やかさと圧倒的な豪胆さを自在に使い分けるハーランド(ds)&ロジャーズ(b)の的確至極なバックアップもキラリと光る。
01. ピース / Peace
02. ランブリン / Ramblin'
03. アンセム / Anthem
04. ディズマル・スワンプ / Dismal Swamp
05. トーン・ポエム / Tone Poem
06. モンクス・ムード / Monk's Mood
07. アイ・アモール / Ay Amor (Live)
08. レディ・ガボール / Lady Gabor
09. プレイヤー / Prayer
Charles Lloyd (tenor saxophone, alto saxophone, flute)
Bill Frisell (guitar)
Greg Leisz (steel guitar)
Reuben Rogers (bass)
Eric Harland (drums)
2021年作品
レーベル:
Blue Note
在庫有り 輸入盤CD (見開き紙ジャケットCD)
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