★Enja(Yellowbird)やStuntよりの諸作にカルトな人気を集めてきた、デンマーク-コペンハーゲンを拠点に活動している個性派日本人女性ピアニスト:平林牧子(1966年東京都生まれ)の、今回は、現在平林が最も力を注いでいるという新ユニット:Weavers=ウェーヴァーズ(フレドリク・ルンディン-ts,ssらとのワンホーン・カルテット)によるアルバム第1弾。
★スペイシーなリアル・インタープレイ・タイプの浮遊感覚やトグロを巻くような妖しいサスペンスが底流する中で、おおらかな牧歌的スピリチュアリティ一杯にテナーが咆哮したり、折り目正しく透明感あるピアノが端麗優美にしっとりとバラードを歌ったり、かと思えば一転してダーク&ミステリアスに抽象度を高めたインプロヴィゼーションの小競り合いが展開されたり、急速調でアグレッシヴに激動的全力疾走が決め込まれたり、更には、南国風情も仄めくリズミカルなビートの上でブルース色濃い粋渋なテイスティー・グルーヴィー妙演がノリノリに繰り広げられたり、或いはまた、ちょっと奇怪で頓狂な異形っぽいフリー即興交感が駆け足で綴られる実験的短尺トラックがあったりと、実に多彩で予断を許さない万華鏡の如き現代ヨーロッパ流シリアス筋モード・ジャズ演奏が、滑脱かつ機略縦横に駆け抜けてゆく極めて濃密な敢闘内容。
★概ね甘さは控えめだが歌心にも決して事欠かない、陰影濃く生々しいサスペンス・ミステリー色を湛えた大層フレキシブルなリリカル・アクション型の、レイジー・スモーキーで幾分かどんよりしていながらしかししっかり白熱してもいる、という絶妙の均衡点を示した物憂く不思議なビタースウィート味の詩的演奏が流麗に紡がれてゆき、じわりじわりと圧倒的迫真力が躙り寄ってくるような道程の中で、ルンディン(ts,ss)や平林(p)の腰の据わった締まりある表情のアドリブ活躍が、抜群の鮮度とスリルをもって清新に冴え渡っており、中々に壮快だ。
★ルンディン(ts,ss)の、テナーでは燻し銀的なシブさや柔和な温もりを際立たせたバップ・カラーの強い肉太ブロウで芳醇なるコク旨さや包容力のあるところを発揮し、ソプラノではレイシーやリーブマンに迫るような奔放激烈なさえずり調のフリー・インプロ攻勢で猛々しく圧倒する、という、全体を通じ水を得た魚の如く伸び伸びと自由に舞い泳ぐその様が傑出してアザやかにキマッており、一方平林(p)の、曲や場面に応じて的確自在に筆致を転ずるも、本性は結構ハンコック系の知的にクールに洗練された王道モーダル・スインガー気質とも思える、気品と瞬発力溢れる抑え役ぶりも好感度充分。
1. マグノリア
2. スプリング2020
3. フリップ
4. ウィンター・ランドスケープ
5. ワーカーズ・ソング
6. シティバズ (p-b-ds,per trio)
7. エンブレサブル・ナイト
8. クレイン・ダンス
9. ヴァシュカール
Fredrik Lundin フレドリク・ルンディン (tenor saxophone on 1,2,4,7) (soprano saxophone on 3,5,8,9)
Makiko Hirabayashi 平林 牧子 (piano)
Thommy Andersson トミー・アンダーソン (bass)
Bjørn Heebøll ビヨルン・ヘーボール (drums,percussion)
2020年6月15日,16日スウェーデン-ヨーテボリ(イェーテボリ)のNilento Studio録音
解説:杉田 宏樹
レーベル:
Solid (Yellowbird=Enja原盤)
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