★菊地雅章(p)(1939年旧東京府生まれ、2015年米ニューヨークで死去)、ゲイリー・ピーコック(b)(1935年米アイダホ州バーリー生まれ、2020年ニューヨーク州アップステートで死去)、富樫雅彦(per)(1940年旧東京府生まれ、2007年神奈川県で死去)、という何れも進取性に富む個性派の名匠3人が、1971年の「Voices」や「Poesy」以来およそ23年ぶりに再び顔を揃えたこの強力ユニット:Great 3は、1994年4月銀座でスタジオ・レコーディングを行ない、これが「ビギン・ザ・ビギン」として、それに先立つ同年3月に新宿ピットインで催した公演の模様がライヴ盤「テネシー・ワルツ」として、ともにAeolusレーベルからCDアルバム化されたが、本盤はその2枚の既発アルバムには収録されていなかった未発表曲6トラック(スタジオ2曲、ライヴ4曲)を追加し、ライヴ編の方は当日の演奏順に曲を並べ替えた、
このユニットの1994年のスタジオ&ライヴの全貌・全記録がたっぷり味わえるCD4枚組のコンプリート・コレクションBOX。
★鋭角的キレと滑らかな流線形っぽさが自然に一体化し、また透明感と濃い陰影とがすんなり共存した、中々ニュアンスに富むクリスタル風タッチのピアノが、抑制と爆発を交錯させるかのようなメリハリの利いたドラマティックな躍動的リリカル・プレイ、を歯切れよくも流麗に紡いで精悍かつ旨味たっぷりのさすが悠々練達した華を成し、一方、巧みなくナチュラルにバネを利かせて太く大きくウネり波打ち、安定した律動感を醸成すると同時に、結構ネチっこく執拗にピアノに絡みつきまとわりつくかの如き「すばしっこい軟体生物」風の蠢きも見せる肉厚ベースや、機略縦横の自在にして極めて芸の細かい遊撃奇襲を四方八方から仕掛けながら、キッチリとダイナミック・スウィンギンなノリを演出する何げに精巧緻密なパーカッション、らの活躍もこってりおいしさ濃厚に魅力を際立たせた、全編非常に密度の高い、中身のギッシリ詰まった迫真熱演の連続で超生鮮に昂揚させる敢闘内容。
★歌心〜メロディーの美を大切にした抒情派な行き方を基調としているが、決して甘すぎず、全身全霊を一音一音に叩きつけるようなリアル・インプロヴィゼーション並びにリアル・インタープレイからほとばしってくる、のっぴきならぬ圧倒的切迫感も奏効して、旋律や和声の端麗な美しさ・デリシャスさと並行し息詰まる(或いは鋭く突き刺さる)只事でないサスペンスをも存分に味わえる、という、歯応え満点の誠に生々しい道程となっており、三者の、悔いを残さずこの一瞬一瞬に持てる瞬発力・集中力そしてイマジネーションをフルに出しきった完全燃焼のアドリブ奮戦が、閃く剃刀のように殊の外シャープに冴え渡っていて、見事。
★菊地(p)の、繊細でまろやかな耽美的ロマンティストぶりを遺憾なく発揮した、機微・機智にも決して事欠かないしっとりとしたスウィート・メロディック節や、スピリチュアルでダウン・トゥ・アースな土の匂いのするブルース・フレージング、で芳醇に魅了する反面、ちょっと殺気めいたところもある壮烈なまでの緊迫感を渦巻かせながら神妙に匍匐してゆく風なダーク・ビターで重みある半思索的たゆたい彷徨型のスローリー文体、の醸し出すシリアスな暗黒ミステリー情趣がまた抜群にスパイスが効いていて美味さ絶品だったりもする、そのさりげなく硬軟・剛柔の振り幅の大きな、しかもしっかり構成されているストーリーテリングがとりわけ全く鮮やか。
★弾力感充分に雄弁旨口な喜怒哀楽に富んだ歌いっぷりを見せるピーコック(b)や、落ち着いた静穏慎重さの内側から結構手数の多い重層的で奥行き豊かな、オーケストラ並の壮大スケールやカラフルなグルーヴを的確に浮かび上がらせる千手観音の如き富樫(per)、らの猛ハッスルの様も実に快調だ。
CD1(スタジオ):
01. Summertime 7:19
02. Skylark (piano & perc duo) 3:30
03. Waltz Step 6:05
04. My Favorite Things 9:17
05. Kansago-No (solo-bass) 4:16
06. Begin The Beguine 5:14
07. Coral Spring 7:42
08. Laura 5:40
09. Bley's Triad 2:40
10. Home On The Range (piano & bass duo) 5:04
11. Song In D※ (solo-bass) 4:28
12. Misty (solo-piano) 6:56
13. Round About Midnight※ (solo-piano) 6:10
CD2(新宿ピットイン/1st Set):
01. Moor※ 25:07
02. Carla 18:57
03. Little Abi 11:33
CD3(新宿ピットイン/2nd Set):
01. Nature Boy 26:13
02. Tennessee Waltz 9:19
03. Rambling※ 8:32
CD4(新宿ピットイン/2nd Set続き〜アンコール):
01. MC:Masabumi Kikuchi 1:05
02. Straight, No Chaser※ 17:05
03. Peace※ 11:59
04. Good-Bye 5:26
※オリジナルリリースCD未収録(未発表)
Great 3:
MASABUMI KIKUCHI 菊地 雅章 (piano)
GARY PEACOCK ゲイリー・ピーコック (bass)
MASAHIKO TOGASHI 富樫 雅彦 (percussion)
CD1:1994年4月1日&2日銀座“音響ハウス”録音
CD2-4:1994年3月29日新宿ピットインでのライヴ録音
レーベル:
Nadja21 King International
在庫有り
4枚組CD-BOX (日本語帯・20頁ブックレット解説付)