かつては神童として大いに騒がれ、近年はすっかりヴェテランの風格も増してきた、本邦ジャズ・シーンを代表する正統派モダン・ドラムの最高実力者にして優れたバンドリーダー:奥平真吾(1966年東京都生まれ)の、前作からおよそ5年ぶり、ピットインレーベルでの4作目となるこのニュー・アルバムは、緊密レギュラー・コンボ:The New Forceに前作同様今回も馬場孝喜(g)の加わったクインテット基本による、気合も格段のスタジオ・レコーディング編。弾みとキレのよさ抜群な、中々精確巧緻にキッチリと律動スイングするドラムの、屈強にして機微ある輪郭もシャープ&クリアーなパンチ・キック!的猛烈アタック、に頼もしく歯切れよく支えられ、煽られながら、流麗滑脱にまろやかな美メロを歌うテナー、コクのある粋渋なグルーヴィー節を綴るギター、凛々しくモーダルな情熱ハジけるピアノ、らがカラフルで華々しくも極めて密度の濃い見せ場を嬉々として溌剌げに繋いでゆく、各ソロの充実と潤滑剤もしくは着火効果っぽいドラムの巧まずして芸の細かい鮮やかなサポート(orナヴィゲート)手腕、とで清々しく昂揚させてくれる会心打内容。徹頭徹尾メロディアス&スウィンギンな単純明快直球勝負を貫いた、理屈抜きで胸のすく娯楽活劇指向の晴々朗々たるハード・バップ大会、が足どりも軽やかに愉しげモードで連続し、風通しもよさそうなひたすらおおらかで開放感ある親しみやすさ満点の道程の中、奥平(ds)の、スケール大きくダイナミックに叩きまくり押しまくる豪快な猛攻面と、濃やかなニュアンスを一打一撃にしっかり込めたセンシティヴ面、を事も無く使い分け、或いは融和させた実に表情多彩なバックアップ、に上手くノセられて、銘々の気力も充実しきった陽光の趣あるマイルド・テイスティーなアドリブ妙技が、どこまでも爽やかに、ハートフルにスカッとした盛り上がりを呈して、全くゴキゲンだ。とりわけ岡(ts,fl)の、レイジー・スモーキーでスムース感ある力は八分目のソフト・ドライヴィングなコク旨テナー・ブロウや、フルートに持ち替えての涼やかでロマンティック&テンダーな哀愁描写、といった辺りが「一座の花形」然と傑出したスター性を悠々放っており、一方これに対して馬場(g)の、バップに根ざしたメロウ・ブルージーなシブめ(ちょっとクールめ)の瀟洒節と、ロック・フィーリング全開で空を斬り裂くような少々やんちゃなゲリラティック暴れフレージング、を交錯させての自在に小回りの利いた劇的立ち働き、も堂々たる「百戦練磨の覇者オーラ」を放ちつつ不敵な拮抗を見せており、ナイス。モード系のパッショネート&エネルギッシュなダイナミズム攻勢と、ストイックに角張った燻し銀的なバップ・イディオムとを各々的確に活かしきり、一部でのエレピによるドリーミー&ファンタジックな詩的アプローチも瑞々しさ絶妙な、堀(p,elp)の抑えの利いた助演も光る。
1. No More Blues ~Chega De Saudade~ (Antonio Carlos Jobim) 7:48
2. Waltz For Zweetie (Walter Bishop Jr) 5:24
3. Hackensack (Thelonious Monk) 6:04
4. Look Up Into The Sky (Takayoshi Baba) 7:13
5. Blues Truth (Shingo Okudaira) 7:04
6. Peace (Horace Silver) 6:14 (fl-g-b-ds quartet)
7. Friday Night At The Cadillac Club (Bob Berg) 5:45 (g-p-b-ds quartet)
8. Dolphin Dance (Herbie Hancock) 7:53 (elp/p-b-ds trio)
9. Seven Come Eleven (Charlie Christian, Benny Goodman) 5:59
岡 淳 (tenor saxophone on 1, 3, 4, 5, 9) (flute on 2, 6)
馬場 孝喜 (guitar except 8)
堀 秀彰 (piano except 6) (electric piano on 8)
古木 佳祐 (bass)
奥平 真吾 (drums)
2020年2月17,18日Studio TLive(西東京市田無町)録音
レーベル:
ピットインミュージック
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