★本格派ビ・バップ・ピアノの比類なきヴェテラン名手:太田寛二(1959年北海道札幌市生まれ)の、今回は、東北へ赴き、現地の腕利きリズムと組んだトリオを基本に、2曲では女性アルトサックスの逸材:名雪祥代(自主製作の過去2作品が好評だった)も加わる、という体制での心機一転編。
★突き刺さるような鋭角なキレ味と流れるような滑らかさや潤いを併せ持ち、また透明感と陰影が自然に表裏一体化した、何げにニュアンス濃やかでアジな硬質骨太ストーン・タッチのピアノが、伝統的なバップ・ピアノの言語作法にキッチリ則ったソリッド&スクエアーな殺陣風の立ち回りを粛々と貫き、並行して哀愁歌謡っぽいメロディック小節をも適宜盛り込んで絶妙のほぐれ効果・和み効果を齎しながら、トータルとしては折り目正しくキリッと背筋の伸びた精悍凛然にして結構渋くてイキな、燻し銀の趣漂う醸熟した確たる鳴音イメージに軽々仕上げて見せた、さすが十全な年季の入り様を感じさせる練達至芸の連続で超芳醇に愉しませてくれる、安定安心の充実内容。
★硬派で雄々しく勇ましげ、それでいて瀟洒なウィットっぽさや詩情も自ずと充分備わった、極めて「ハード・バップらしいハード・バップ」の王道を迷わず真っ直ぐに突き進む明朗娯楽指向のシンプル・ストレート快演、がイキイキと敏活に展開され、ベース&ドラムのツボを心得た堅固かつ瞬発力ある律動ぶり=鉄板サポートにガッチリ支えられて、太田(p)の、剛健ストロングなタフガイであり、小粋なジェントルマンでもある、という、旨味こってりで懐の深い円熟のアドリブ妙技が、あくまで事も無くスイスイと余情豊かに冴え渡ってゴキゲンだ。
★パウエル系のバップ・イディオムにしっかり準拠してシブく律儀に力学的アクションの型を歯切れよく体現する、固く堅牢げで幾分かストイックともとれるゴツゴツ凹凸したダイナミック・フレーズを揺るぎなき確信をもって紡ぎ、同時に、軽妙洒脱な小唄的マイルド・リラクシング・メロディーをも抜群のサジ加減で盛り込んで、上手くほっこり感を醸成、しかもそのアウトラインは衒いのない自然体のどこか飄々とした、ちょっと達観したようでもある熟練達人ならではの淡麗さにすんなりサラリと収束しており、後には何とも云えぬ風流な幽遠雅趣が仄かに残って絶品。2曲に現れる名雪(as)の、コク旨でソウルフルな純正ハード・バッパー・タイプの芸風に徹した肉太くもハード・ドライヴィングな滑脱ブロウも、これまた美味しく好インパクト。
1. Minor Misharp
2. Deep Purple
3. So Sorry Please
4. Webb City
5. A Cottage For Sale
6. The Way You Look Tonight
7. Remember
8. Moose The Mooche
9. Walk Right Back
太田 寛二 Kanji Ohta (piano)
佐藤 弘基 Hiroki Sato (bass)
今村 陽太郎 Yotaro Imamura (drums)
名雪 祥代 Sachiyo Nayuki (alto saxophone on 4, 9)
2020年日本作品
レーベル:
Julian Records
在庫有り
国内制作 デジパック仕様CD