★円熟にして益々軒昂なる快進撃を続ける、ヴェテラン辣腕ドラマー:ジェフ・ハミルトン(1953年インディアナ州リッチモンド生まれ)の、今回は、従前とはベーシストのみチェンジした(新たに加わったのは、シアトルを拠点に活躍しリーダー作も着々発表してきた中堅の俊英:ジョン・ハマー)新トリオ(feat.タミール・ヘンデルマン-p)による一編。
★ダイナミックでいつつニュアンス濃やかに鋭く滑脱なるグルーヴとスリルを醸成するドラムの、中々表情多彩で芸が細かくズバリ的確な手練の機動的サポート、も絶えず鮮麗に確たる魅力を際立たせる中、これにガッチリ支えられ、また触発されて、端正でキレのいい、陰影にも富んだ骨太ストーン・タッチのピアノが、バップ&ブルースの伝統に深く根を下ろし、適度にモード色も加味した抑制と含蓄あるメロディック寄りの躍動的闊達プレイを明快明晰に紡いで、非常に親しみやすいが決して甘すぎない、精悍さ&シブさも充分の毅然とした花形ぶりを見せた、何げに余情豊かなさすが熟達の好演内容。
★歌心とスイング感を何より大切にし、バップやブルース由来の燻し銀的吟醸味ならびに重厚なノリのよさもバッチリ備わった、アメリカン・メインストリーム系ピアノ・トリオのこれぞ鑑たるちょっと渋めの人情娯楽的行き方が、ひたすら歯切れよくイキイキと続き、硬派雄壮でイナセげなハード・バップの典型を示した大振りのスウィンギン・アクション路線と、バラードやボッサ調などの柔和で穏やかな寛ぎリリカル趣向、とがバランスよく配列された、メリハリも程好く飽きのこない半ドラマティックな道程の中で、座長ハミルトン(ds)の実にアザやかな機略縦横の立ち回りや、ハマー(b)のこってりコクのあるハード・ドライヴィングな敏活重圧攻勢、に上手く刺激されながら、主役を担うヘンデルマン(p)の、リキみなくも緩急巧みに振り幅の大きさ・懐の広さを発揮したアドリブ奮戦が、雄渾にして小粋で風流な白眉の煌きを放ってゴキゲンだ。
→例によって、オスカー・ピーターソンやレッド・ガーランドとかにも通じる、瀟洒でいて勇み肌かつ豪快でもある「ファンキー」・タイプのおおらかアーシー・ソウルフル節が今回も絶好調で、随所に「イヨ!待ってました!!」のスカッとした大当たり炸裂!!!を見せているが、その一方、バップorモードの伝統的イディオムに律儀に則ったややストイックともとれる(微熱を孕みつつの)殺陣の型を粛々と貫くような力学ワザや、寛ぎめの抒情的な局面における、音数を絞って簡潔質素に哀愁的情景を煙霧の如く描き込み、後には何とも云えぬ奥深い余韻が残る、という、そうしたダーク・スモーキーで薄曇りの如き不透明さを湛えたアンニュイ・フレージング、といった辺りにもまた格別の新味がある。
01. Make Me Rainbows
02. Helens Song
03. Catch Me If You Can
04. The Pond
05. Lapinha
06. The Barn
07. Bucket O'Fat
08. Bijou
09. Big Dipper
10. Moonray
Tamir Hendelman (piano)
Jon Hamar (bass)
Jeff Hamilton (drums)
2019年8月14日,15日カリフォルニア州ハリウッドのCapitol Studios - Studio B録音
レーベル:
Capri
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デジパック仕様CD