★生まれ育ったサンフランシスコ〜ベイエリア・シーンでの活動を経て、2003年にはニューヨークへ移り、ブルックリンを本拠として益々精力的に、共演人脈も着々広げながら活躍を続けてきた(バードランド、スモールズ、ジャズ・スタンダード、55バーといった名門クラブで演奏)、音楽教職者としても多忙なコンポーザー肌の個性派敏腕ピアニスト:アート・ヒラハラ(父親が日系2世、母親が日本人の「日系2.5世」)の、Posi-Toneでの5作目となる本盤は、ピアノ・トリオで6曲、女性テナーサックスのメリッサ・アルダナをフィーチュアしたカルテットで5曲、ソロ・ピアノで2曲、という変化に富んだ自作曲メインの一編。
★澄みきった透徹な光沢を放つようであり、かつまた、陰影を湛えながら渋いブルース由来の吟醸味を豊富に発散しもする、キレがあって端正なクリスタル風タッチのピアノが、エレガンスとダイナミズムとブルージー・テイストを按配よく融和させた、敏捷でいて折り目正しい躍動的メロディック・プレイを中々精緻に紡いで、瑞々しく爽やかな魅力を放ち、一方、図太く豪快にブオブオと咆哮する結構野性味みなぎった威勢のいいテナーも、しっかり頼もしげに華を添えた、全般に美麗さ(或いは瀟洒さ)半分・正統的ハード・バップらしさ半分な、きっちりメリハリの利いたドラマティックな道程形成でフレッシュ・スリリングに愉しませる好演内容。
★概ね、テナー抜きのピアノ・トリオもしくはソロ・ピアノによるトラックでは、繊細慎重神妙な、独特の深いロマンティシズムや思索瞑想性またはスウィート・テンダーな洒落た歌心を濃く反映した、抑制ある抒情指向のアプローチが展開され(時々意表を衝いてアブストラクトなフリー即興的行き方になったりとかも)、テナー入りのカルテット曲では、アルダナ(ts)の豪放磊落に大きくブロウするワイド&ストロングな轟鳴のあり様、にグループ全体が自ずと引っ張られるような恰好で、ストレートアヘッドなモード系ハード・バピッシュ路線を少々荒削りさも帯びつつ驀進する、といった風な構成となっており(一部逆転するところもある)、局面に応じて滑脱自在に文体を変移させるヒラハラ(p)の、軽やかかつ濃やかな語り口〜ストーリーテリングの妙が何とも鮮麗に冴え渡っていて見事。
→耽美的で優雅なきめの細かい哀愁バラード表現や、軽妙で粋なウィットっぽさ仄めく寛ぎ小唄調、テナーの突進を熱っぽく追い上げてゆくダイナミックなファンキー・アクションなど、表情多彩でしかもワンポイントの余裕を絶やさない、その懐の広そうな筆の進め具合は、何げにブレなく確固としていて卓抜だ。
01. Mother's Song (solo piano) 3:32
02. Blessed Son, Mr. Weston (piano trio) 5:41
03. Balance Point (quartet) 5:47
04. Ascent (piano trio) 4:11
05. G-Yokoso (quartet) 5:41
06. Had It Happened (piano trio) 5:06
07. A Fine Line Between (piano trio) 3:34
08. Like Water (quartet) 8:02
09. Prelude To A Kiss (D. Ellington) (solo piano) 4:20
10. Fulcrum (piano trio) 3:40
11. The Path Of The Gods (quartet) 6:30
12. Homage (piano trio) 6:00
13. Lament For The Fallen (quartet) 3:42
Art Hirahara (piano)
Joe Martin (bass except 01, 09)
Rudy Royston (drums except 01, 09)
Melissa Aldana (tenor saxophone on 03, 05, 08, 11, 13)
2018年9月11日NYCブルックリンのAcoustic Recording録音
レーベル:
Posi-Tone
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見開き紙ジャケット仕様CD