★1950年代前期=10代の頃からプロとして活動し、The Diamondsを皮切りに様々な小グループで辣腕を揮う一方、アン・バートンやリタ・ライスら数々の人気ヴォーカリスト達の伴奏、Boy Edgarsビッグ・バンドの花形ソロイスト、でも知られ、ベン・ウェブスター、バド・シャンク他アメリカのビッグ・ネーム陣とも多々共演を重ねながら、CNR、Cat、LMJに味のあるリーダー録音を残した、オランダのモダン・ジャズ・シーンを代表するテナーサックスの名手の一人:ルード・ブリンク(1937年オランダのハールレム=Haarlem生まれ、1990年死去)の、本盤は、ブリンクがイタリアへ赴いての現地の敏腕リズムと組んだカルテットによる演奏が聴かれる、1988年10月伊ヴェローナ録音の激レア・アルバムの(恐らく初)CD化。
★肉太くも艶やかで渋い旨味や潤いに溢れた芳醇なトーンのテナーが、ハード・ドライヴ感満点の豪快でダイナミックな勢いある美メロ大咆哮を轟かせ、しかもその吹鳴は中々まろやか&柔らかにスムースな流線形を描いてもいる、という、巧まざる自然体の伸び伸びとした歌い泳ぎっぷりで懐深く悠然たる堂々の華を成し、一方、程好く鋭角に尖った硬質タッチでシャキシャキ・キビキビとスクエアー・バピッシュに立ち働くピアノの、抑えの利いた活躍も凛々しげに彩りを添えた、全編明快ストレートな潔い正攻法演奏の連続で大いに沸かせる好演内容。
★歌心とスイング感に重点を絞り込んだ、ごくシンプルで親しみやすく気さくさや温もり一杯な人情派エンタテインメント指向の「ハード・バップらしいハード・バップ」快演、がひたすら晴朗に、ハートフルに展開され、リズム隊の手堅く安定律動的でいて瞬発力にも長けたグルーヴィー&スリリングなサポートに頼もしく支えられながら、ブリンク(ts)の、あくまで衒いや作為を排して極めてナチュラルに波乗りっぽく音の潮流に身を任せるかのような、平明で何の変哲もないがしかしその一つ一つの吹音から熟成されたコクや風流な雅趣が自ずとじんわり滲み出てくる感じの、さすがさりげなく十全に練り上げられ、磨き抜かれた匠の至芸が朝飯前にスイスイ冴え渡って、全く見事。
→概ね、レスター・ヤングやズート・シムズ辺りの流れを汲んだ寛ぎモダン・テナーの正統らしい丸みある滑らかな筆致を基本身上とし、時にはパンチを利かせて鋭くパワフルに速射アタックをカマしてきたり、バラードやマイナー調のブルース・ナンバーとかではデリケートなニュアンスのこもった哀愁描写、端正なロマンティシズム表現に得難い妙味を発揮したり、などの幅も見せ、トータルとしては決して肩肘張らぬスマート・ジェントル&マイルド・テンダーな、節度をもって聴く者を優しく和ませてくれる包容力に満ちた音キャラが悠々泰然と形作られており、美味さ格別、好感度も抜群だ(また、ラスト・ナンバーでのナイーヴ&ソフィスティケートなヴォーカルも素敵)。ハード&シャープに殺陣ワザを繰り出すマルチェッロ・トノロ(p)の助演も的確で◎。
1. Double Face (Ruud Brink) 5:23
2. Cynthia Blues (Ruud Brink) 5:40
3. Conte (Ruud Brink) 5:42
4. Deep In A Dream (J. Van Heusen, E. DeLange) 6:12
5. Medley a) Anema e Core (S. D'Esposito, T. Manlio) b) Body And Soul (J. Green, E. Heyman, R. Sour, F. Eyton) 8:49
6. What's New? (B. Haggart, J. Burke) 3:51
Ruud Brink (tenor saxophone) (vocal on 6)
Marcello Tonolo (piano)
Giko Pavan (bass)
Valerio Abeni (drums)
1988年10月18日イタリア-ヴェローナのC.I.M. Studio録音
レーベル:
Caligola
在庫有り
デジパック仕様CD