★円熟にして依然チャレンジングな絶好調の快進撃を続けるヨーロッパ抒情派ピアノの最高峰名手、エンリコ・ピエラヌンツィ(1949年イタリアのローマ生まれ)の、本盤は、先頃好評を博していたStoryvilleからの最新作:「New Visions」(2019年3月録音)よりも前に吹き込まれていた(2018年9月ベルギー録音)、馴染みのイェスパー・サムセン(b)並びに国際派の超凄腕:ホルヘ・ロッシー(ds)との強力トリオによる一編。
★硬質堅固さや重心の安定性と、滑らかな潤い感や軽み、とが渾然一体化した、非常に味のある端麗タッチのピアノが、マイルド・ロマンティックに優しく哀愁を映したり、歯切れよく鋭敏ダイナミックに正攻法で力強いグルーヴを体現したり、更には、思索性を孕みつつ不穏で怪しいサスペンスを醸成したりと、自然で濃やかな表情変化を見せる半ドラマティック・プレイを滑脱に紡いで、生鮮度抜群のきららかな華を成し、一方、卓越した当意即妙さで機動的・遊撃的に絡んでくるベース&ドラムのアタッキングなサポートも、迫真のスリルとノリを高めて好アクセントを形創った、全般に歯切れよくも興趣深遠なるさすがの会心打内容。
★緩急硬軟のメリハリは適宜つけられるも、トータルとしては、ピエラヌンツィ(p)得意のちょっとダークなメランコリック節の映え具合に何より先ず大きくスポットの当てられた、躍動型バラードとも云うべきメロディアス指向のリリカル・アクション的な行き方がメインとなっており、1曲1曲は比較的簡潔にまとめられたテンポのいい道程展開の中で、サムセン(b)&ロッシー(ds)の瞬発力に殊の外長けた中々自在なバックアップに上手く刺激触発されながら、ピエラヌンツィ(p)の、決してリキまず自然体で伸びやかに、なおかつ丁寧に一音一音丹誠こめて歌い上げる、熟練にして清新さを失わない語り口がさりげなくシャープに冴え渡っていて見事。
→ヨーロピアンならではのある種の文芸色や耽美性に貫かれた翳りあるクール・アンニュイな詩的フレージング、には益々磨きがかかっており、その、歌心に溢れていながら甘すぎずピリッとしたスパイス感を含んだ毅然さ漂う筆運びは絶品で、一転、硬派バッパーっぽくスピーディーに疾走する鋭角的スウィンギン・アクションや、瞑想世界の深い闇を彷徨うが如きビター・ミステリアスなアプローチ、といったややハードめの転回にもこれまた鮮麗なる魅力があって、全体を通じ、あくまで肩の力の抜けたナチュラル・スムースな歩の進め様にほぼ終始しながら、後(もしくは音と音の隙間?)にはえも云われぬ余韻〜雅趣が残る、という、一聴恬淡でもあり、巧まずして雄弁でもある、そうした境地っぽいワザのキレは卓抜だ。
01. Falling From The Sky
02. Silk Threads
03. Sofa
04. Turn In The Path
05. Love Waiting Endlessly
06. Perspectives
07. Instant Reveal I
08. Who Knows About Tomorrow
09. Instant Reveal II
10. Recuerdo
11. Song For An August Evening
Enrico Pieranunzi エンリコ・ピエラヌンツィ (piano)
Jasper Somsen イェスパー・サムセン (double bass)
Jorge Rossy ホルヘ・ロッシー (drums)
2018年9月10日-11日モートル・ミュージック(ベルギー)録音
こちら で試聴できます。
レーベル:
Challenge
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