★1960年代、東京芸大作曲科時代からプロとして演奏、ジョージ川口とビッグ4や、沢田駿吾グループなどで辣腕を揮うが、やがて演奏家=ジャズ・ピアニストとしての活動には一区切りつけて第一線を離れ、初期の由紀さおりのブレーン〜音楽監督的な働き(また、佐良直美や天地真理らにも楽曲・アレンジを提供)を始め、歌謡曲やCM音楽、映画音楽などの世界で作・編曲家として成功を収めて、1970年代半ばには再び本格的にジャズ界に復帰、自己のトリオも始動し、その後1986年にはオーケストラを結成、並行して浅川マキとのコラボでも圧倒的な存在感と唯一無二の個性を遺憾なく発揮して、歳を重ねる毎に益々精力的に、益々オールラウンドに(→意外性ある企画コンボとか、多彩・多角的な数々のデュオ・プロジェクトとか、或いはまた、益々深化してゆく一種求道的なソロ・ピアノ路線とか・・・)ライヴ&レコーディングを今日までひたすらハイペースで断行し続けてきた、和ジャズ・ピアノのワン・アンド・オンリーな独創的名匠:渋谷毅(1939年東京都生まれ)。
★本盤は、「ドリーム」や「クック・ノート」と並んで、渋谷毅オーケストラ以前の一・純ジャズ・ピアニストとしての伸び伸びとした最高の名演が聴かれる一枚、=1982年2月〜7月アケタの店で録られた(※ライヴではない)ソロ・ピアノ集:「渋やん」(原盤:アケタズ・ディスク AD-13)、の待望の再CD化(過去、アケタズ・ディスク/プラッツからCDが出ている)版。
★硬質堅牢で歯切れよく打鍵の強い、それでいて潤いにも富んだ中々端正なストーン風タッチのピアノが、何よりも先ず優しく親しみやすい歌心の表出を第一義とし、同時に、バップ・イディオムを用いた鋭角的ダイナミズム或いはブルース由来の粋で渋い吟醸味、更には変則的尖り感と飄々さに彩られたモンク・ライクな立ち回り趣向、といった要素も細かく自然に混入させて、結果、ハートウォーミングにしてシャープなソリッド感や迫真のスリルも十二分の、基本はあくまでリリカル・グルーヴィーな極めて取っ付きやすい、そしておいしさもたっぷりの、かつ何げに奥深く多面的な、人情娯楽筋タイプの豊饒世界を滑脱に創出した充実内容。
★1曲1曲はわりかし簡潔にまとめられた快テンポの道程が続き、渋谷の、ゆったり落ち着いた調子と、テキパキ・キビキビと敏捷闊達に躍動するサバけた邁進力、とがナチュラルに一体化した、決して奇を衒わず一音一音に誠心こめて丁寧に情景を活写してゆく、平易真っ当でありながら非常に懐深い練達の語り口が、悠々&軽々と冴え渡って素晴らしい。
→肩の力を抜いて自然体でごく伸びやかに、愉しげに指を滑らせているようでありつつ、しかしよく聴いてみると一つ一つの音を慎重に選び抜いて真摯に、心をこめて全身全霊で極上の謹製品を贈り出してくれている感じもあるその、全編しっかり旨口でノリよくも、さすが熟成された芳醇なる滋味が滲む筆運びのあり様は、何とも云えぬ幽玄に満ちていて誠に感動的。
1. ルナジリオ
2. オールド・フォークス
3. エストレリーター
4. マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ
5. ソリチュード
6. タリラリ・ブルース
7. ボディ・アンド・ソウル
8. ミステリオーソ
9. ジプシー・ラブ・ソング
渋谷 毅 (piano solo)
1982年2月23日,28日,6月26日,7月18日アケタの店(東京・西荻窪)での録音(非ライヴ)
オリジナル発売年:1982年 (原盤:アケタズ・ディスク AD-13)
レーベル:
Octave-Lab (Deep Jazz Reality) (アケタズ・ディスク原盤)
在庫有り
国内制作CD