★大学教授を務めながらニューオリンズやラスヴェガス、コロラド州のライヴ・シーンで演奏活動を続け、かつてはエラ・フィッツジェラルドやトニー・ベネット、ジュリー・ロンドン、ペギー・リーら錚々たるスター達のバックを、更にはウディ・ハーマン楽団やライオネル・ハンプトン楽団、エリス・マルサリス・バンド等の一流バンドを歴任、また、サックス奏者の兄:フィルと組んだDingbat作品や、比較的最近では、デンヴァーのトランペッター:ボブ・モンゴメリーとのコラボレーションによるSea Breeze作品、そして、先輩・師匠であり長年の親友でもあったカール・フォンタナとの2トロンボーン・コンボのSea Breeze作品、などで抜群に冴えた腕前を揮っていた、モダン・トロンボーンのヴェテラン名手:
アレン・ハーマン(1938年ルイジアナ州ニューオリンズ生まれ)の、初の来日レコーディング作品となる本盤は、ボン・ボーンズで評判をとった女性トロンボーンの逸材:駒野逸美(1988年生まれ、千葉県白井市出身)とがっちりコンビを組み、ジャパニーズ・ピアノ・トリオがバックについた2トロンボーン・クインテットによる一編。
★まろやかでおぼろな温もり感とシャキシャキした鋭敏さが混在し、またスモーキーな陰影と眩い光沢を表裏一体化させたようでもある、2トロンボーンの賑々しくもちょい仄々としたアンサンブルが柔和げに響鳴し、両人各々の、ブルージー・ソウルとバップ・スピリットそして歌心に満ち満ちた闊達溌剌たるソロや、硬質骨太タッチのピアノの、律儀一徹にスクエアーな角張った立ち居振る舞いに終始する生粋バッパーらしい燻し銀的プレイ、が何とも渋くてイキなおいしさこってりの絵を泰然と飾ってゆく、全編歯切れよくノリノリにしてホッと安心できるハートウォーミングな快演内容。
★徹頭徹尾メロディアス&スインギーに人情娯楽派ハード・バップの王道ド真ん中を揺るぎなく邁進し続ける、晴朗でおおらかな嬉々とした愉しげムードの大吟醸セッションっぽい行き方が、元気一杯かつ和気あいあい調子で続き、ハーマン(tb)と駒野(tb)の巧まずして濃淡メリハリを描き出した中々ドラマティックなソロ合戦や、矢藤(p)のグループ全体をキリッと引き締める凛々しい殺陣風妙技、が抜群の鮮度で清々しい盛り上がりを呈し、実にゴキゲンだ。
★ハーマン(tb)の、独特のくすみや焦げ味を漂わせつつ、ちょっとモコモコした感触で微妙にけだるくもある憂愁的情緒やリラクゼーションを悠然と映し出すメランコリック・ブルージー・ブロウが、さすが十二分に熟成された超芳醇なる魅力を余裕で揮いきっており、一方駒野(tb)の、よりスキッとしてカラッとした明るく晴れやかな、衒いなく真っ直ぐに哀歓を歌う小粋さ充分の朗々節も、これまた誠に爽やかで云うことなし。加えて、一貫して硬派でシブい、伝統的バップ・イディオムに則った鋭角なダイナミック・アクションを堅牢にぶつけてくる矢藤(p)の職人ぶりも好印象。
1. Hear And Now (Dave Hanson)
2. Here's That Rainy Day (Jimmy Van Heusen)
3. My Romance (Richard Rodgers)
4. I Could Write A Book (Richard Rodgers)
5. Polka Dots And Moonbeams (Jimmy Van Heusen)
6. Early On (Dave Hanson)
7. How Insensitive (Antonio Carlos Jobim)
8. Blues For A&I (Dave Hanson)
9. It Was A Beautiful Thing (Dave Hanson)
Allen Hermann アレン・ハーマン (trombone)
駒野 逸美 (trombone)
矢藤 亜沙巳 (piano)
吉田 豊 (bass)
柳沼 佑育 (drums)
2019年10月東京録音
レーベル:
Somethin' Cool
在庫有り
国内制作CD