★本邦モダン・ジャズ・アルト(&ソプラノ)サックスの第一人者=ヴェテラン重鎮:土岐英史(1950年兵庫県神戸市生まれ)の最新作は、土岐の前作:「Black Eyes」(2018)でも組んでいた個性派女性ピアニスト:片倉真由子(1980年宮城県仙台市生まれ)(バークリー音大やジュリアード音楽院に学び、M&Iよりの自己トリオ2作や浜崎航-saxとのコラボ等で評判を上げる)と差し向かいでガッチリ組み合った、丹誠溢れるデュオ演集。
★歯切れよくも跳ねのいい弾力感を伴った、石と団子の中間ぐらいなニュアンスある美味タッチのピアノが、抑えを利かせつつストレート・バピッシュに結構渋い鋭角的立ち回り節を落ち着いた調子で紡ぎ、かたや、締まりとユルみが絶妙に融和した優しく端麗なトーンのアルトが、全くの自然体で衒いなく伸び伸びと歌謡指向のブローイング大会に興じるかのような、ひたすらわかりやすく平易な直球吹鳴を余裕で轟かせ、両者のコントラスト感豊かなキャッチボール対話や何げにピッタリ息の合った対位法的アンサンブルワーク、が何とも愉しそうに展開されて、おいしさ格別、フレッシュなスリルや歯応えも充分のハートフルな音世界が織り成された、さりげなく中身の濃い好演内容。
★ウォーム&インティメイトな和気あいあいの寛ぎ気分が変らず底流し、同時に、ダイナミックでキレのいい中々パワフルなスイング感や作為なきナチュラルな緊張も有した、全き正攻法のごく取っ付きやすいリリカル・ハード・バップ快演が続き、巧まずして抜群のツーカーぶりを見せる両者の、伸びやかでありながら節度もわきまえた、シンプルで真っ直ぐ、それでいて余情深いアドリブ・プレイがひたすら柔和&温和に冴え渡って、思わずこちらはほっこり顔で仄々と安心させられる。
★土岐(as)の、肩の力を抜いて仕掛けも排し、しかし自ずと鍛え上げられ練磨された砲弾的ハード・ドライヴ感をバッチリ呈しつつの、敏活滑脱なブルージー・スインギー&メロディアス・ブロウ、がイナセで威勢よくも端正に映えを示していて実に鮮やかで、一方片倉(p)の、ちょっとストイックなほどスクエアーに型を重んじた「バップの権化」然たる穏やかめアクションに終始するその、燻し銀っぽくもある芯の据わったダーク・スモーキーな弾鳴の風流さ・シブさもこれまた見事。簡潔にして雅趣めいた含蓄に富んだ、誠に味のある逸品。
1. 枯葉
2. After Dark
3. How High The Moon
4. Gee Baby Ain't I Good To You
5. Back Home Blues
6. 黒いオルフェ
7. I Hear A Rhapsody
8. Lover Man - dedicated to Noboru Shudo
土岐 英史 (alto saxophone except 3, 5) (soprano saxophone on 3, 5)
片倉 真由子 (piano)
2019年6月18日 岡本太郎記念館(東京都港区南青山)での録音
レーベル:
Days of Delight
在庫有り
CD