★オランダの美人歌手マリエル・コーマンの、前作同様、夫君ヨス・ヴァン・ビースト率いるトリオ(+ギター)と組んだ快調作。蘭録音。曲はスタンダード中心。しっとりとした潤いとドライなサッパリ感を併有した、清澄かつ柔和な高め・細め・ハスキーめのクール・ヴォイスでの、自然体調子の端麗な抒情的スインギー演唱が瑞々しい映えを示した爽快内容である。
★リラクゼーションを保った軽妙滑脱な波乗り気分の行き方が続く中、主役歌手の、詩の情緒と粋な小咄的ウィットを大切にした、きめ濃やかで表情多彩、それでいて力八分目の流麗なスタイリッシュさをも呈した優しいストーリーテリングが、一貫してフレッシュ&キュートに冴え渡り、一方、抑えを利かせて機動的かつ構成的にこれをサポートしつつ、ファンキー・ブルージーな渋いソロで簡潔・芳醇にカッチリと見せ場を飾ってゆくp者以下、バック陣の包容力ある職人的活躍もおいしく際立って、道程は和気あいあいにして(作劇的)デリカシー満点の、何ともアジな快適世界に仕上げられている。落ち着いたスウィート&アンニュイな折り目正しい耽美的スロー・バラード、軽快でイキのいいスイング小唄調、翳りを含んだそよ風ムードのボサノヴァ、等々、適宜起伏に富んだ半ドラマティックな展開をひたすら小気味よくサラリとした寛ぎ遊覧感覚で楽しませる、余情も豊かな充実作。
1. Too Marvellous
2. So Tinha De Ser Com Voce
3. My Foolish Heart
4. Thou Swell
5. Gentle Rain
6. The Song Is You
7. Que Reste Il De Nos Amours
8. You Don'T Know What Love Is
9. It Might As Well Be Spring
10. I Never Went Away
Marielle Koeman(vo)
Jos Van Beest(p)
Evert J. Woud(b)
Klaas Balijon(ds)
Douwe T'Reve(g)
Giovanni Mastrandrea(ds,per)
2004年 録音
在庫有り
デジパック仕様CD
※このCDのみご購入ご希望の場合は、送料込み価格2,619円になります。
★あなたの心と体を包み込む、ほのかなぬくもり。大切にしたいくつろぎの時間は、愛に溢れた音楽と共に……マリエルの奇跡の歌声が、再び舞い降りる。至福の時間をもたらしてくれる至極の一枚。
★前作“4つのハート”から約2年。待ちに待ったマリエルの最新作が届いた。はやる気持ちをおさえて自宅のオーディオ・ルームで1曲目をそっと再生する…ビーストの美しいピアノのハーモニーが鳴り響いた直後、マリエルのあの奇跡の歌声が再び舞い降りた。ゾクっとするその感覚。まるで恋をしている時のような豊かな感覚が僕の体中を駆け巡る。
★その1曲目「Too Marvelous for Words」に完全にやられたと思った直後の2曲目「あれっ?」と一瞬耳を疑う……なんとA.C.ジョビンの名曲をポルトガル語で歌っているではないか。マリエルの風のように心地いいさわわとした唄声と、まるでジョビンのようにシンプルな音数で伴奏するビーストとの二人の間の妙。3分弱というボサノヴァな演奏時間も潔い。そして3曲目は大好きなスタンダード・バラード。その切なさに忘れかけた昔を想い出し、夜中に一人ワインを空けてしまう。
★もうここまでで十二分に満足と油断していると、立て続けに「Early Autumn」の続編とも思える小粋なボッサ・アレンジが嬉しい「It Might as Well〜」〜ドラムのリムで軽快にスイングしていく「The Song Is You」〜極めつけのフランス語で歌う「Que reste il〜」と、まるでベスト・アルバムのような“かゆいところに手が届く”緩急自在の素晴らしい選曲。そして気が付くと何回もリピートして聴いてしまっている。
★この至福の時間をもたらしてくれる至極の一枚。こんなに何度も聴き返したくなるヴォーカル・アルバムと出会えたのは何年ぶりだろう……。(Text by hirochikano)