★11歳でチェロを弾き始め、18歳でジャズ・ベースを独学で開始、その後アメリカへ渡ってバークリー音大に学び、2006年に同大を卒業するとニューヨークに拠点を移して活動、そこで出会った菊地雅章から大いに薫陶を受け、2008年9月に日本へ帰国し、辛島文雄や日野皓正のサイドで遺憾なく辣腕を発揮、現在も峰厚介カルテット、本田珠也トリオ&カルテット、八木美知依トリオほか多くのグループに参画して、超精力的・野心的に大活躍を続けている、進取性に富んだオールラウンドにして個性派な現代ベースの逸材:須川崇志(1982年群馬県伊勢崎市・旧境町生まれ)の、満を持しての初リーダー・アルバム。
★ニューヨーク最前線で活躍する独創肌の2人、ピアノのレオ・ジェノヴェーゼ(1979年アルゼンチンのVenado Tuerto生まれ)&ドラムのトム・レイニー(1957年カリフォルニア州サンタ・バーバラ生まれ)、と組んだ強力トリオによる、須川自身はチェロとコントラバスを曲によって弾き分けるインプロ色の強い力作。
★ある時は情感を排して極めて抽象性・異形性の濃い奇音を奔放かつ無作為げに連発し、ある時は荘厳で神妙なクラシック寄りの弓弾きを繰り出して妖しいエレガンスを醸成、またある時は安定律動的に小気味よく歯切れのいい定形ビートを体現して結構旨口なグルーヴを創出したりもする、チェロまたはベースのエッジの利いた鋭い鳴動が、絶えず濃厚なるその存在感を際立たせる中で、ピアノ&ドラムの概ね硬派フリー・ジャズの語法に則った攻撃的・遊撃的な立ち回りワザが執拗に、スリリングに噛み込んで来、ジワジワ迫るような圧倒的サスペンスと興奮、そしてミステリアスな浪漫を満喫させてくれる敢闘内容。
★即興度の高い基本はフリー派タイプの辛口なアクション・インタープレイをメインとしつつ、トラックによってはあくまで「楽曲」らしい情緒性やノリを尊守した端正で美しいアプローチも現れる、という、中々予断を許さない張り詰めた行き方が続き、対決と連繋の兼ね合いも絶妙な鮮度抜群の道程の上で、銘々の、一触即発の駆け引きと並行してビシビシ強行炸裂させる、腰の据わった(個人プレー的?)インプロヴィゼーション攻勢が実に快調だ。須川(cello,b)の、半ば打楽器的に奇怪でシュール或いはノイジーなアヤしい蠢き音を形成する、ヒリヒリした硬質プレイと、一転、詩情&ムード&耽美性に溢れた哀愁バラード表現、の両極端それぞれに瑞々しさ満点の得難い妙味が発揮されており、一方、ジェノヴェーゼ(p)の徹底して純度の高いアブストラクト指向を貫いた乱調なる暴れぶりや、レイニー(ds)の、過激で暴虐それでいて絶えず一定のノリのよさや、裏返し奇形化したような独自のスイング感を堅持した軽快飄々たる立ち働き、も各々バッチリ鮮麗で好インパクト。
1. First Meeting (Sugawa / Genovese / Rainey)
2. Outgrowing (Takashi Sugawa)
3. Violoncello (Sugawa / Genovese / Rainey)
4. Short Story Long (Sugawa / Genovese / Rainey)
5. Motion (Sugawa / Genovese / Rainey)
6. Izayoi 「十六夜」 (Michiyo Yagi)
7. Ancient Blue (Takashi Sugawa)
8. Uncompleted Waltz (Takashi Sugawa)
須川 崇志 Takashi Sugawa (cello on 1, 3, 4, 6, 8) (contrabass on 2, 5, 7)
レオ・ジェノヴェーゼ Leo Genovese (piano)
トム・レイニー Tom Rainey (drums)
2017年9月NYブルックリンのThe Bunker Studio録音
レーベル:
ソングエクス・ジャズ (Song X Jazz)
在庫有り
国内制作・見開き紙ジャケット仕様CD