★コネチカット州ニューヘヴンに生まれ、幼い頃から音楽に親しんだサンズは、5 歳で曲を書き始め、10 歳でプロになるという早熟ぶり。その後13, 4 歳ときにレジェンド/ ビリー・テイラーに出会ったことも大きなポイント。きっかけは、7 月に行われたサマー・スクールに参加したことながら、最初の一週間で、テイラーに才能を見いだされ、直々のプライベート・レッスンを受けることになったのだそう。それ以来、テイラーが音楽的な師匠になったのはいうまでもありません。サンズ曰く、テイラーは“Music Grandfather”。テイラーがヒーローとして仰いだというアート・テイラーのことを話せば、サンズは“The Roots”“A Tribe Called Quest”“John Legend”といったアーティストのことを話し、ヒップ・ホップやR&B の影響も語ったとのこと。この辺り、世代を越え、ジャンルを越えた音楽への愛を感じさせるエピソードといえます。
★そんなサンズが、クリスチャン・マクブライドと出会ったのは必然かもしれません。レイ・ブラウンの再来と言われ、ジャズの王道のフィールドでデビューし、かつジェイムス・ブラウンを心から愛し、ソウルやR&Bといったブラック・ミュージックのグルーヴを融合させるマクブライドは、正に、サンズのお手本ともいうアーティスト。サンズ曰く“クリスチャン・マクブライドとは、最初に会った時からクールなコネクションを感じていたし、音楽において、同じ道を見ていると感じた”とのこと。しかし、出会うべくして出会い、かつ、<<チャンスをモノに出来る>>かは別の次元の話。そこをガッチリつかめるのがこの若きアーティストの才能の証といえます。
★本作は、そんなサンズが、世界に投げかける第一弾!気合も充分なら、音楽も様々なものが織り込まれました。☆オープニングは、チック・コリアにインスパイアされたというナンバーですが、ドライヴ感あふれるリズムに、キャッチーなメロディが、ジャズのフィーリングを失うことなくスタイリッシュに決まるソロは正に本格派。超絶の技巧は、華麗なトリルを聴けば、充分過ぎるというものです。10 曲中8 曲のオリジナルの中には、バド・パウエル、またハービー・ニコルスへのオマージュとしたナンバーもあり、その曲の名前は、文字通り“Bud's Tune”。ソロには、王道の4 ビートのスウィング感が根付きます。
☆一方、現代的なアプローチも多数。ハドソン川沿いのウェスト・サイド・ハイウェイが見えるマンハッタン・スクール・オブ・ミュージックの練習室で作曲したというM3 はマーカス・ストリックランドをフィーチュア。スピード感と重量感があるNYのヴァイブレーションを感じるナンバー。ベン・ウィリアムスのバンドでよく共演したといったギラッド・ヘクセルマンをフィーチュアしたM7 は、スペイシーなギターの音色とコンテンポラリーな色彩感がさわやかな演奏を聴かせてくれます。また、ビル・ウィザースのナンバーM8 では、エッジのきいたヒップなグルーヴも。一方、地元にいた時は、ラテンのグループでもよく演奏したというサンズ。M5 はアフロ・キューバンなナンバーで情熱的なソロを飛ばします。
★小説の世界では「処女作にその作家のすべてが詰まっている」とよく言われますが、音楽の世界もしかり。ワールドワイドに向けては実質デビューともいえるリーダー作には、サンズの思いがいっぱい。子供の頃に見たというアニメ映画のナンバーで、リンダ・ロンシュタットが歌いグラミー賞を受賞したという最後のバラード・ナンバーまで、多彩な魅力が満載。
★プロデュースは、クリスチャン・マクブライドと共に、MackAvenue のおなじみ、Al Pryor, 日本が誇る現代のファーストコール・ベーシスト、中村恭司と、マーカス・ベイラーを核にした作品。本年は渡辺貞夫のバンド・メンバーにも抜擢されたサンズ。今後が楽しみです。(新譜案内より)
1. Armando's Song (5:11)
2. Song of the Rainbow People (6:20)
3. Pointing West (6:07)
4. Freefall (6:51)
5. ¡Óyeme! (6:33)
7. Reaching for the Sun (7:10)
8. Use Me (7:27)
9. Gangstalude (6:01)
10. Somewhere Out There (6:46)
Christian Sands (p),
Marcus Baylor (ds),
Gilad Hekselman (g 7,8,9),
Christian McBride (arco upright bass solo 8),
Yasushi Nakamura (upright bass), Cristian Rivera(perc 5),
Marcus Strickland (ts 3,4, b-cl 4)
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