★冒頭からのけ反るような音が出てくるのである。重量級のリズム陣がブルースはかくあるべしと握りしめた拳に、現代的洗練を込めて迫り来る。対するサバティーノはタメを利かせた見事なノリで、ピアノを朗々と鳴り響かせ、今にもスピーカーから飛び出してきそうな活きの良さだ。続くラテン曲となれば、これはもうオラシオ・エルナンデス無双。負けじとジョン・パティトゥッチは得意の6弦ベースで技巧の限りを尽くし、サバティーノが煌めく音色で、色彩感溢れるメロディを紡ぐ。
★まるで美音のシャワーのようなこのトラックをハイライトに、全編恐るべきテクニックを駆使しながら、難解なところが一つもない。そして寂寥感のある名曲「The Old Country」でもほんのりとした暖かさを滲ませて、リスナーに音そのものをすくい取る至福な時を過ごさせてくれる。だからピアノトリオの新名盤として、リリース以来愛され続けて来たのだろう。また名盤の大切な条件は再発されることにある。
●本作はサバティーノが1999年にシカゴの名門クラブ「JAZZ SHOWCASE」に出演したことを契機に、同地のHallwayレーベルからリリースされたが、気がつけば入手困難な状況で、タイミングを逃したファンからは歯噛みの大合唱だったのだ。しかし真に優れた作品がそのまま埋もれる事はない。ファンの声に応えるかのように澤野工房が動いた。それは信頼出来る「耳」からのお墨付きでもある。名盤の第二の誕生と言えよう。『Threeo』が傍にあることで、我々はこれからも幸福な時間を過ごせるのだ。(Text by 羽根 智敬)
1. F.S. Blues
2. Coco's Way
3. Meeting of Memories
4. Just in Time
5. Hallucinations
6. Negrito
7. A Weaver of Dreams
8. Sotto La Nerve
9. The Old Country
10. That's All
Paolo Di Sabatino (piano)
John Patitucci (bass)
Horacio Hernandez (drums)
1999年11月 録音
在庫有り
デジパック仕様CD
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