CATFISH RECORDS

今田勝トリオや山本剛トリオで頭角を現したベーシスト：福井五十雄の、これが初リーダー・アルバムとなった、ヴィブラフォンの松石和宏を全面フィーチュアした2種カルテット(市川秀男-pと横内章次-gが交代で登場する)による、1976年10月東京録音の秀作(TBM-78)のCD化。骨太く重厚そして堅固にウネりを伴いながらハード・ドライヴィングなスイング・ビートを形成するベースの、ドス&睨みのバッチリ利いた迫力満点の轟鳴や、キレ味鋭く敏速かつ精確に結構けたたましく雷を落として回るようなドラムの大砲撃、に上手くノセられ、捲くし立てられて、クール・ブルージーな吟醸的グルーヴ節とパーカッシヴ&メタリックな殺陣風アクションを自在に融和させつつ、流れるような潤滑さをもって軽やかに舞い泳ぐヴィブラフォン、真っ当なバップ語法もしくは歌謡的リリカル・フレーズとよりアクロバティカルで半アブストラクトな曲芸的大立ち回りを交錯させる威勢のいいピアノ、腰の据わった落ち着きある泰然自若の体を呈しながら、中々粘っこくダウン・トゥ・アース&ホット・パッショネートにブルース色濃厚なソウル節をじっくり唄い上げる渋旨ギター、らが色彩コントラスト〜メリハリも鮮やかに、各々しっかり濃い口の千両役者ぶりを溌剌と発揮してゆく快演内容。こってりコクがあって終始一貫ブルージー・テイスティーな王道娯楽指向のハード・バップ熱演、が雄々しくもおおらかに展開され、福井(b)の、強烈なバネ力や縦横無尽のすばしっこさ・韋駄天っぽさと、まろやか&ふくよかな温もり、を併せ持った、朗々と雄弁に歌う波打ち鳴動も絶えず芳醇な黒幕オーラを頼もしく放ち続ける中で、一座の花形役を担う松石(vib)を筆頭に、銘々の、あくまで揺るぎなく堂々とした風格のもと愉しげに得意ワザを炸裂させきったソロ活躍が、豪快で開放的しかも極めて密度の高い盛り上がりを見せて、全くゴキゲンだ。松石(vib)の、ミルト・ジャクソンやボビー・ハッチャーソンの流れを汲んだ、黒さとクールネスの兼ね合い(加えて旋律美と打楽器性のバランス)も絶妙な70年代型モダン・ヴィブラフォンの正統らしい滑脱プレイ、＝ごく親しみやすく取っ付きやすいマレット捌き、が何とも鮮麗に冴え渡っていてとりわけ爽やかで、また、市川(p)の、暴れ馬っぽく凸凹した速射爆撃攻勢を見せていたかと思えば、マイナー調のバラードでは一転してしんみりと、日本的な情念を孕んだスピリチュアルな哀愁描写に瑞々しい妙味をも揮うその劇的ストーリーテリング、そして横内(g)の、わりかし頑固一徹にブルースマンになりきった風な、クリスチャン〜ケッセル系バップ・イディオムやウェス型のアツいオクターヴ奏法も的確適所に活用する決してブレない名人芸、といった辺りもおいしさ格別で大いに余情深し。

1. セブンス・アヴェニュー・サンライズ
2. ハッピー・ウォーク
3. レディT
4. ドント・エクスプレイン
5. セブンス・アヴェニュー・サンセット
6. アーリー・サマー

松石 和宏 (vibraphone)
市川 秀男 (piano on 1, 3, 5, 6) (5：intro only)
横内 章次 (guitar on 2, 4, 5)
福井 五十雄 (bass) (cello on 2, 5)
小原 哲次郎 (drums)

1976年10月18,20日東京 Epicurus Studio録音

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