★センス、アイディア、演奏すべてに優れたクオリティ。弦から放たれたベースの迷いのない力強さが醸す空気感がたまらない。端正でバランスのよいピアノトリオ・アルバムだ。
●一曲を除き、リーダーであるダヴィッド・モウの作曲であるが、これぞベーシストの作品だと感じさせる迷いのない力強さが醸す空気感こそ、このアルバムPourquoi Pas ?の聴きどころであろう。とにかくベースがよく歌っていて、弦から放たれた胴の鳴りの表情が豊かで、すべての曲に聴き応えがあり、それぞれ違う魅力を放っている。そんなダヴィッドに負けないほど存在感なるピアニストのJean-Yves Monjauze。汲めど尽きせぬ流麗なフレーズの連続。ダヴィッドとのインプロビゼーションの掛け合いは、会話より饒舌なのではと思わせる。また、ベースとのハミングも絶妙。ドラマーのエリックの的確無比なテンポの刻みと、繊細な音は、フランスのエスプリというか、曲にエレガントさを与えている。オープニングを飾るに相応しい「T’aimes sur le lit」の手拍子が右、左、右とめぐり、ベースとドラムの見事な絡み。一度聴いたら忘れない。ずっとアタマに鳴り続ける。続くタイトル曲でもある「Pourquoi Pas ?」こそ、アルバムのハイライト。煌めくメロディーの素敵な作品だ。意味は、クエスチョンマークが付くので疑問形なのだが、やってみようよ!とか、いいんじゃない?という前向きなニュアンスを持つ。なるほど、アルバム全体に漂うポジティブさに合点がいく。
それにしても、フランスというお国柄は次々に優れたベーシスト・コンポーザーが現れるなぁ。 またひとり、お気に入りのジャズマンを見つけた。
(Text by 前泊 正人氏)
1. T'aimes sur le lit
2. Pourquoi Pas ?
3. Sans Toit
4. Roule Ma Poule
5. In the Flush
6. Automne
7. -10 Degres
David Maur Cadiou (bass)
Jean-Yves Monjauze (piano.rhodes)
Eric Jaccard (drums)
2012年9月 録音
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デジパック仕様CD
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