★端正に刻まれるフレーズは、あくまでも麗しく…深い色合の結晶から、放たれる強い光彩。ピアノ美に満ちた、豊かな欧州的情緒が心を揺さぶる!
●近頃、私は金脈採掘者が発見を求めるようにジャズを聴いてしまう。そのほとんどは土塊ばかり掘っているのだが、徒労のあまり土塊自体に情が移ってしまう時だってままある。しかし疲れて立ち寄った小川の底に光る砂金のように、ラカトシュが其処にいた。冒頭「You Must Believe In Spring」の端正な聴かせ方にいきなり振り子が揺れる。それはビル・エバンスの重たい演奏が染み付いた心に、香りの異なる爽やかな空気を送ってくれる。ラカトシュのジャズにはこうした小さな発見が必ずある。
★「Felteni Kell」は万国共通の涙腺刺激系メロディを持つハンガリーの流行歌だが、終止荘厳なタッチで安易な感傷を拒む。タイトル曲「Bumerang」では新主流派風カルテットに様変り。ラカトシュはサポートに徹して、同郷ハンガリー出身、新鋭テナー奏者のガボール・ボラの豪快なトーンと流麗なフレージングの旨味を存分に引き出している。彼のように声高な自己主張を排し、完成したフォーマットの中で毎回勝負するのは簡単な芸当ではないだろう。何も起きないジャズが退屈であるのと等しく、先鋭的なジャズを探求して、その実「手癖」だらけのつまらない音楽だって世の中にはごまんとある。試みは時としてリスナーをどこかへ誘う。しかし多くはどこにも誘わない。でも安心して欲しい。発見より既視感が先行してしまう危うい現代でも、いつもラカトシュは水槽の魚のように寡黙でいて、確かに何かを起こしてくれる。(羽根 智敬氏)
1. You Must Believe In Spring
2. Felteni Kell
3. Bumerang
4. Solar
5. Love Letters
6. Steps Of The Lord
7. Butter And Sol
8. Spring Is Here
9. Passing Months
10. Homage To Bach
Robert Lakatos (piano)
Christian Lakatos (bass)
Dre Pallemaerts (drums)
Gabor Bolla (tenor sax #.3,6,9)
2010年11月21日,22日 録音
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デジパック仕様CD
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