★すっかり恒例となった、渋谷毅(1939〜)の自己オーケストラ・メンバーとのデュオ・シリーズ、今回はアルトの津上研太(1965〜)を迎えての、津上作の楽曲集。
★柔らかな丸みと直線的締まり〜シャープネスが渾然一体化したアルトサックスの、爽涼感豊かな折り目正しいメロディック吹奏と、鋭角的で重みある暗影感を濃く宿しつつ並行してキラキラした光沢や潤いを甘美に表出して見せもするピアノの、優しく懐深い抑制型のエレガントな弾奏、とが、コントラストも絶妙に息の合ったコンビネーションで奥行きある抒情世界を中々きめ細かく形作ってゆく、ホッと安心の美味内容。
★緩急起伏は適宜自然につけられるも、根底にはウォーム&インティメイトな寛ぎ気分がしっかり保持された、徹頭徹尾メロディアス指向の端正で親しみやすいリリカル奏演が連続。津上の、適度に脱力した掠れ気味のハスキーなアルト・トーンによる、徒然気ままに宙を浮遊して一筆書きスケッチを楽しんでいるような飄々さを感じさせながら、そのフレーズ一つ一つにはバップ&ブルースの旨味がたっぷり詰まった、実に芳醇でハートウォーミングな文脈・音像を軽やかに紡ぎ上げて見せる、という、熟成されたテイスティーな美旋律家ぶりが絶好調で、一方渋谷の、抑えを利かせたスクエアーな硬質ダイナミズム醸成の合間合間にスウィート&プリティーな美味しい瀟洒節を多々滑り込ませてくる、行間含蓄に富んだ簡潔明瞭な立ち居振る舞いもさすが納得の妙味。
1. A Reason For Tears
2. いやおい
3. Boys & Water Guns
4. Cosmic Valley
5. 無銭優雅
6. 発作の一時間前
7. 12月の月
8. Ballad For 916
渋谷 毅 Takeshi Shibuya(piano)
津上 研太 Kenta Tsugami(alto sax,soprano sax)
2009年9月2日&3日アケタの店(東京・西荻窪)でのライヴ録音
レーベル:
Carco
在庫有り
特製紙ジャケット仕様CD