●ウエスト・コーストで大きな影響を与えているドラマー、シェリー・マンが1954年にコンテンポラリーに録音した沢山の作品の中で、当時10インチで発売され話題を呼び、ベスト・レコーディングの中に入る「THE TWO」の再演を試みたもので、タイトルは「ONE ON ONE」として、前記タイトルの作品のメインはシェリーがリーダーとなったが、私が提案し、今回はラス・フリーマンがリーダーとなり、作曲・編曲もシェリーの了解を得てフリーマンに全部まかせて制作されたものである。
★現在ではデュオ形式の作品は多く海外及び日本でも制作されているが、1954年当時では大変珍しく、音楽誌メトロノームなどでも話題になった作品の一つであった。その要因は革新的な演奏であったからである。フリーマンはオリジナルを始め大半がスタンダードナンバーでレコーディングされ、シェリーも良きパートナーとして協力してくれたので、このアルバムを完成することが出来た事を報告しておくことにする。(新譜案内より)
1 I'M GETTING SENTIMENTAL OVER YOU
2 TAKE THE A TRAIN
3 ON GREEN DOLPHIN STREET
4 PRIME TIME
5 ONE ON ONE
6 HOW ABOUT THAT
7 I'M OLD FASHIONED
8 BLUE MONK
9 LOOSE AS A GOOSE
10 LULABY OF TE LEAVES
RUSS FREEMAN (PIANO)
SHELLY MANNE (DRUMS)
1982年6月10日,12日 HOLLYWOD 録音
在庫有り
紙ジャケット仕様CD
【PERSONNEL】
RUSS FREEMAN(P)
1925年5月シカゴ生まれ。34年から4年間クラシックを学び、47年にハワード・マギーと共演。ジャズシーンに入り54年にチェット・ベイカーと組んで話題を呼び、ウエスト・コーストの名ピアニストとして高く評価されている。筆者の感じでは50年代よりはるかにパワフルで凄みを感じるプレイが聴きものである。(2002年6月27日ラスベガスで死去)フリーマンについて面白い話が一つ。ジェリー・マリガン(BS)がロスのライブハウス「ヘイグ」にバンドを契約したおり、メンバーであったフリーマンが当日顔を見せず、マリガンはこの時初めてピアノレスで演奏を行い、以後、マリガンのピアノレスが生まれたのである。
SHELLY MENNE(DS)1920年6月ニューヨーク生まれ。40年代に入ってドラムを手にするようになり、52年に好きな馬を育てる為に気候の良いカルフォルニア・ロスアンゼルスに移り、多くのウエストコースターズとセッションを行い、シェリーマンホールを設立。ウエストコーストジャズの中心的人物であった。(1984年ロスアンゼルスで死去)2人のこの作品は28年ぶりに顔を合わせた事になる作品となった。この録音は1982年6月に行われたが、そのおりシェリーは「フリーマンは途方もなく素晴しいジャズピアニストであると共に作曲家としてもユニークで個性的である」と語り、フリーマンは「シェリーは拍子の徹底した探求、空間、フィーリング、そして良く歌うドラマーである」と評している。
【曲目紹介】
I’M GETTING SENTIMENTAL OVER YOU
トミー・ドーシーオーケストラのバンドテーマとして用いられている有名なナンバー。作曲はジョージ・ベイスマン。シェリー・マンのベースドラムが新しい味をつけ、フリーマンの流れる様なピアノがからんで、デュオの面白い味を存分に味わわせてくれる。
TAKE THE A TRAIN
これはデューク・エリントンのバンドテーマに使われている曲で、作曲は1939年にビリー・ストレイホーン(P)。フリーマンとシェリーのヴィヴィッドなインタープレイが大変ユニークでスリリングな演奏である。
・ON GREEN DOLPHIN STREET
映画「大地は怒る」に挿入された映画音楽で、作曲はブロニスロウ・ケイパー。マイルス・ディビスが自分のグループで演奏し、有名なジャズナンバーとなった曲で、幻想的かつ詩的なバラッドとして演奏されている。
PRIME TIME
フリーマンのオリジナルナンバー。32小節形式の曲で、無伴奏のピアノ1コーラスが奏されて、シェリーが加わって3コーラス演奏が続けられる。ここではフリーマンが作曲家としても30年間成熟した味を示してくれている。
ONE ON ONE
アルバムタイトル名で、フリーマンのオリジナルナンバー、A・Bという構成。Aの部分はピアノがメロディを弾き、ドラムスがカウンターポイントを演奏。Bの部分は逆にドラムがメロディを演奏、ピアノがカウンターポイントを演奏する構成となっている。フリーマンとシェリーは実にスリリングである。
HOW ABOUT THAT
この曲もフリーマンのオリジナル。16小節、8小節、16小節に構成されているナンバーで、一寸ラテン調の雰囲気を持ったナンバー。ここではシェリーの芸の細かいドラミング、そして粋なセンスが発揮されているナンバーとなっている。
I’M OLD FASHIONED
作曲はジェローム・カーン。フリーマンのファンタスティックなピアノプレイに対してシェリーの刺激的なドラミング溢れるプレイが楽しめる一曲で、ポピュラーなメロディラインを2人が如何にジャズセンスに満ちたプレイをしているかが聴きものである。
BLUE MONK
82年に亡くなったモダンピアニスト、セロニアス・モンクの代表作。フリーマンのダイナミックでブルージーなプレイ。シェリーの深いソウルを感じるドラミングが鮮やかである。
LOOSE AS A GOOSE
フリーマンのオリジナルナンバー。タイトルは2人が一緒に演奏することの楽しみからネーミングされたナンバーで、ここではシェリーの見事なブラッシュ・ワークが鮮やかである。
LULLABY OF THE LEAVES
1932年にバーニス・ペトケアが作曲したナンバーで、この演奏でフリーマンは明快なアクセントをつけ、シェリーはオフ・ビート的なドラミングで対抗し、見事なコントラストを生み出している。そしてソロ交換も聴きものである。