★我が国が生んだ世界に通じるジャズの国際的スター・プレイヤーの代表格、=本邦バップ・ピアノの草分け(にしてゴッドマザー)的存在であり、またビッグ・バンドを率いた活動でも多大な成果を収めてきた、日本ジャズ界(但し活動拠点は米ニューヨークである)のカリスマ的ドンの一人:秋吉敏子(1929年旧満州・遼陽生まれ)の、本盤は、1961年2月、一時的に短期間帰国した折にトリオを率いて東京で行なったコンサート(リサイタル)の模様を収めた、オリジナルは朝日ソノラマのソノシートであるレアな幻の名盤の、待望の再々CD化。
★強固で歯切れよくも精確に鍵盤を打撃する、濃い陰影とニガみを多分に含んだ骨太ストーン・タッチのピアノが、バップ・イディオムを使った殺陣の型っぽい鋭角的ダイナミズム表現=硬質スウィンギン・アクションを根幹としつつ、時折ファンキーにもなる吟醸感豊かなブルース節や独自の"和の唄性"を加えて、トータルとしては至ってソリッド&スクエアーでシブ〜い燻し銀風の墨絵っぽい情景を描き出す哀愁プレイを幾分ストイックげに紡いで、何とも味わい深い魅力を放ち、一方、ひたすら粛々黙々と鋭く安定律動ビートを繰り出すベース&ドラムの助演も重みと豊かな音量をもって頼もしい存在感を際立たせた、全体を通じストロングかつグルーミーなバピッシュ・グルーヴの世界を芳醇に堪能させる揺るぎない妙演内容。
★歌心とスイング感を何より大切にするも決して甘くないキリッとした毅然さに概ね貫かれたごくオーソドックスな硬派バップ演奏、が適度にビターなダークネスを帯びつつ中々ハードボイルドに展開してゆき、チェリコ(b)&マーシャル(ds)の堅実にしてヘヴィーウェイトなサポートもノリとスリルを的確に醸成する推進力抜群の道程の中で、秋吉(p)の、腰を据えて伸び伸びと得意技を綴るも絶妙の按配で抑制の利いている、バップ職人のようであり優れたストーリーテラーでもあるアドリブ奮戦〜翳りに富んだ語り口が余情深く冴え渡っていて卓抜だ。
→パウエルを出発点とするバップ・ピアノの正統らしいハードでダイナミックな立ち回りフレーズを変らず基調として道筋の芯をしっかり強硬に固め、時にはピーターソンやG・ハリス辺りに底通するファンキー奏法が飛び出して粋な旨味が増したり、またオリジナル曲に代表される日本人的な歌の心の顕示にも得難い独創性があったり、などといった転回も見せながら、しかしアウトライン的には謹厳そうで濃厚な暗影を湛えたかなり渋いコクのある弾鳴キャラに揺らぐところがない、という、明快であり奥行き満点でもあるそうした個性のあり様は結構頑としていて説得力も大。
1. 黄色い長い道
2. 箱根のたそがれ
3. 木更津甚句
4. ソルベージ・ソング (ソルヴェーグの歌)
5. ディープ・リヴァー
秋吉 敏子 (piano)
Gene Cherico ジーン・チェリコ (bass)
Eddie Marshall エディ・マーシャル (drums)
1961年2月東京でのライヴ録音
レーベル:
Studio Songs
在庫有り
国内制作CD