★本邦モダン・サクソフォンの最高峰名手の一人=大ヴェテラン:山口真文(1946年佐賀県唐津市生まれ)と、その山口のカルテットでも辣腕を揮い、今や現代和ジャズ・ピアノの第一人者として頂点に登り詰めた感のある才媛:片倉真由子(1980年宮城県仙台市生まれ)、という超プロフェッショナルな二人がガッチリ組み合い、ショーター、ハンコック、マイルス、トニー・ウィリアムスら作による所謂60年代新主流派の名曲群を奏したデュオ・アルバム。
★強堅でハードなドライヴ感と柔らかな丸みを併せ持った、逞しい中にニュアンスの豊かさを匂わすテナーが雄々しくエモーションを吐露するように唸りを上げて悠々華を飾り、これを繊細に盛り立てると同時にスリル爆裂の対抗音をぶつけてくるところもあるピアノの、機微に富みながら確固としてマイペースでもあるその剛腕を遺憾なく発揮した鋭角的パッショネート・プレイも骨太で頼もしい魅力を放った、また甲高く尖ったトーンのソプラノのさえずり鳴きも内に熱いものを秘めた鋭い妙味を揮い、両者の協調と対決を表裏と成してのピタリと息の合ったやりとりに清新な緊張感と旨味をもって気持ちよく浸りきれる、何げに密度の高い充実内容となっている。
★歌心とスイング感と楽曲そのものが本来的に有する一種の"妖しさ"を旨とした、モーダル・バピッシュ・ジャズの本道を行く陰影豊かで彫りの深い、ビタースウィートな味わいの中々ピリッとした交感が展開してゆき、山口(ts,ss)の、熟成感に溢れながら決してそこに安住せず絶えずサムシング・ニューを探求する風な、精悍軒昂なるブローイングが鮮度抜群に煌めき、かたや片倉(p)の、硬質重厚さを堅持しつつ敏活ダイナミックに躍り、その一音一音をクッキリとクリアーに浮かび上がらせる迫真のアクション遊撃がまた圧倒的だったりと、終始互角の拮抗ぶりを見せる対話からは耳が離せない。
★山口(ts,ss)の、テナーでの温もりとソリッド感が縦横に交差する滑脱にして凛々しさもみなぎったドライヴィング吹奏や、ソプラノでのスパイスを効かせてシャープに突っ掛かってゆく半ばワイルドな立ち回りなど、一貫して生々しい意気・気魄を感じさせる真剣勝負のアドリブ妙技が絶好調の冴えを示しており、一方片倉(p)の、甘さ控えめで質実剛健っぽくキレ味鋭さと圧あるダイナミズム攻勢を仕掛けてくるその殺陣ワザにも問答無用のド迫力がほとばしっていたり、といった具合で、両者とも幾分シリアスに苦味走った立ち働きのあり様が殊の外フレッシュ・スリリングで説得力&美味さも満点だ。
01. Nefertiti
02. Footprints
03. Circle
04. Dolphin Dance
05. Chan's Song
06. Prince Of Darkness
07. Miyako
08. Riot
09. Pee Wee
10. Cantaloupe Island
山口 真文 (tenor saxophone on 01, 02, 04, 06, 07, 09) (soprano saxophone on 03, 05, 08, 10)
片倉 真由子 (piano)
2024年9月10日,12月10日東京・岡本太郎記念館(東京都港区南青山)での録音
レーベル:
Days of Delight
在庫有り
国内制作CD