★トルコとメキシコにルーツを持ち、米テキサス州立大学でみっちりとトロンボーンを学び、修練を重ねた後ニューヨークへ進出、主流派シーン第一線で精力的に活動しながら、SGQ Records、Outside Music、D:Clef Records、Next Level、そしてこのPosi-Toneへ順当にリーダー録音を続け、好評を得てきた、硬派王道ハード・バッパーで鳴らす新世代モダン・トロンボーンの実力者:オルティン・センカラーの、Posi-Toneでの3作目となる本盤は、グレッグ・ターディー(ts,cl)&ベーン・ギレス(vib)をフィーチュアした2管クインテットを基本に、途中ブルース・ウィリアムズ(as,ss,fl)の加わった3管セクステットなどにも転じながらの気合みなぎる一編。
★精細精巧でくっきりとクリアーに鳴動するトロンボーンの、アーシー・バップとモードの間を往来する感じの敏活メロディック・プレイがウォーム&テイスティー・グルーヴィーな中々よく整った妙味を放ち、クール&メタリックなヴィブラフォンや、思索性とパッションが入り混じりつつレイドバックしたリラクゼーションも提供する表情多彩なテナー、らの活躍もトロンボーンとは好対照に魅力的彩りを加えた、全般に現代版ポスト・バップの正統らしいゆとりを残したスマートな妙演が続いて、ノリとスリルと旨味をバランスよく愉しませる快投内容。
★旋律や和声のスッキリした美しさと安定して心地よく揺れ躍るスウィンギン・グルーヴ感を変らず拠り所とし、ブルース・フィーリングやバップ・スピリットも豊富に有した、折り目正しく整理されていながら決して甘すぎない、硬派シリアス傾向と旨口吟醸感の融合加減も絶妙な今日流ハード・バピッシュ奏演が颯爽と展開してゆき、コズロフ(b)やストリックランド(ds)の律動力と遊撃性を軽々同時に(表裏っぽく?)揮った機略縦横のバックアップに上手く触発されつつ、センカラー(tb)の節度と品格を保った一貫してワンポイントの余裕あるアドリブ妙技が、粋渋にして行間豊かな好調ぶりを見せて素晴らしい。
→先ず何より繰り出される音そのものが非常に端正で精確な全く破綻のない(隙もない)ハイ・テクニシャンたる完成度を堅持している、という点が特徴的で、かと云って情味に欠けたりする面はなく芸風の基本としてはカイ&J.J.辺りにも底通するしっかりブルージーでダウン・トゥ・アースな温かみとコク深さ溢れるイナセっぽい節回しを旨としているところに好感が持て、そうした、超絶テクニカルで自由自在なおかつハートウォーミングな美味しさや気さくさの備わった妙なる均衡で成立している吹鳴キャラには、実に瑞々しい魅惑性がある。
★概ねセンカラーのリラクシング風情に同調するターディー(ts)の相棒ぶり(但、#05でのちょっと不可思議なクラリネット・プレイは上手い按配で異彩を放っている)や、硬質感ある冷涼な音響を鋭くぶつけてくるギレス(vib)のアクセント的役回り、終盤近くに現れて適度に音場を掻き回すウィリアムズ(as,ss,fl)のゲリラ攻勢、といった辺りもそれぞれにナイス・デリシャス。
01. Unleashed (A. Sencalar) 5:14
02. Obsession (A. Sencalar) 6:16
03. Forgiveness (A. Sencalar) 5:40
04. Set Adrift (B. Gillece) 5:34
05. 17 West (E. Dolphy) 7:54
06. Solid Gold (M. Dease) 6:15
07. Buenaventura (A. Sencalar) 5:38
08. Straight Street (A. Sencalar) 5:06
09. Softly, As In A Morning Sunrise (S. Romberg) 5:52
10. What's Next (A. Sencalar) 6:00
Altin Sencalar (trombone)
Greg Tardy (tenor saxophone on 01, 02, 03, 04, 06, 08, 10) (clarinet on 05, 07)
Bruce Williams (alto saxophone on 08) (soprano saxophone on 09) (flute on 07)
Behn Gillece (vibraphone)
Boris Kozlov (bass)
E.J. Strickland (drums)
2024年6月17日米NYブルックリンのAcoustic Recording録音
2025年アメリカ作品
レーベル:
Posi-Tone
在庫有り
輸入盤・見開き紙ジャケット仕様CD
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