★Posi-Toneよりの過去2作品が好評だった、ジュリアード音楽院でジャズサックスの講師を務めながらニューヨークの主流派シーン第一線で精力的に活動を続ける、セントルイス出身の新世代モダン・テナーサックスの実力者&コンポーザー:ウィリー・モリスの、今回は、ヴィブラフォンの人気者ベーン・ギレスの出入りするクインテットやカルテット(デュオも2曲)による一編。
★まろやかなソフトネスや流線形っぽさと幾分引き摺るような掠れ感や微妙な脱力感を湛えた、陰影に富むスモーキー・トーンのテナーが、ブルージー・バピッシュであり憂鬱そうにメランコリーを映すようでもある、一貫してダイナミズムとムードに彩られた情緒型アクティヴ・ブロウを綴って中々雅趣深き魅力を揮い、クールネスと思索性の醸成に一役買うヴィブラフォンや、スマートでいて力学傾向も強いキレのあるピアノ、らの活躍もそれぞれピタリとツボにハマッて確たる存在感を示し、ベース&ドラムの律動性と瞬発力・遊撃力を兼ね備えたバックアップもノリとスリルを的確に演出した、全体を通じリリカルにしてしっかりシリアスでもある現代ポスト・バップの正統らしい行き方が聴かれ、フレッシュに昂揚させる敢闘内容。
★歌心や抒情性は充分ながら決して甘くはないアンニュイ&グルーミーな心象風景を写し出す風なタイプの、基本はリリカル・アクション型モーダル・バピッシュ奏演が精悍さとけだるさない交ぜでスリリング・グルーヴィーに展開してゆき、大雑把に捉えるなら先ず主役であるモリス(ts)の吹鳴に1960年代のウェイン・ショーターを想起させるところが多分にあり、それに伴ってギレス(vib)はややボビー・ハッチャーソン風、デイヴィス(p)はハービー・ハンコックの流れを汲んでいそう、といった要素も手伝ってトータルなアウトラインとしては1960年代新主流派ジャズの今日流リブート、的な趣があり、一定の苦味走ったハードボイルドさをもって独特の半メディテイティヴな音景色を躍動感一杯に描破する理知的ジェントルネス漂う奮戦が続いて、懐かしさと清新さ混合の道程を鮮度抜群に愉しませる。
★モリス(ts)の、ショーター・ライクな妖しい魔術性や瞑想感を孕みつつ力は八分目でソフト・スムースに流れるが如き軌跡を描く面と、より烈しくアグレッシヴに猛り吠えるもコルトレーンの一歩手前に踏みとどまるパワフル・ダイナミック面、の双方に瑞々しい妙味が発揮されており、またソプラノに持ち替えての今度はストレートにコルトレーンの影響を感じさせる尖ったパッショネート咆哮も切迫力充分だったりと、何げに振り幅大きく表情多彩なその吹鳴は旨味と魅惑力に溢れる。爽やかな清涼感と打楽器的強硬ヒット力の両極端をドラマティックに活かしきったギレス(vib)の健闘も光る。
01. Flyover Country (W. Morris) 7:24 (ts & p duo)
02. Patterned (W. Morris) 5:14
03. Comfort Zone (J. Davis) 4:20
04. The Folks Who Live Down The Hill (W. Morris) 5:25
05. How To Get Away With Murder (W. Morris) 8:15
06. Charade (W. Morris) 6:31
07. Into Somewhere (J. Davis) 5:39
08. Dialect (W. Morris) 5:56
09. Tell Me A Bedtime Story (H. Hancock) 6:32 (ts & vib duo)
10. What's Expected (W. Morris) 4:18
Willie Morris (tenor saxophone except 08) (soprano saxophone on 08)
Behn Gillece (vibraphone except 01, 04, 07)
Jon Davis (piano except 09)
Boris Kozlov (bass except 01, 09)
Rudy Royston (drums except 01, possibly03, 09)
Jason Tiemann (drums on 03)
2023年5月19日,2024年6月24日(#01, #04, #07)米NYブルックリンのAcoustic Recording録音
レーベル:
Posi-Tone
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