CATFISH RECORDS

★現在は米ニューヨークに主たる本拠を置いて旺盛に活動している、カナダ出身の新世代ベーシスト：Ilya Osachuk(カナダのウィニペグ生まれ)の、本盤は、メンツの異なる2種のピアノ・トリオを率いたセルフ・プロデュースの(恐らくは)初リーダー・アルバム。

★こってりコク深くウネり躍る肉太ベースの鳴動も殊の外テイスティー・グルーヴィーに魅力を際立たせる中で、端麗タッチ・ピアノの歯切れよさと滑らかさ兼備のブルース色濃い小粋プレイもしくは冷涼な潤いや透明感を湛えた第2のピアノの中々慎重で折り目正しい哀愁ロマンティック妙技、が煌めくような鮮度抜群の華を成し、パンチの利いた砲撃力を誇るドラムまたは精細なシャープネスが身上のもう一方のドラムらも各々的確にグルーヴとスリルを高め、加えて随所に浮かび上がっては雄弁旨口なドライヴィング節を嚙ましてくるベースのソロ活躍も芳醇なる好アクセントを形作った、全編を通じあくまで親しみやすく分かりやすい娯楽派ハード・バップの鑑たるメロディック奏演が貫かれて、スッキリと爽やかに愉しませる会心打内容。

★メロディーの美や歌謡性と安定律動的ノリのよさを何より重んじ、単純明快な人情肌エンタテインメント街道を迷いなく突き進む幾分オールド・ファッションともとれるド真っ当リリカル・バピッシュ快演、が溌溂と楽しげに展開してゆき、濃い口の吟醸的スピリチュアリティやアーシー・ソウルを波打つように太々と唄い上げるOsachuk(b)の堂々とした座長ぶりや、エッジを効かせて鋭くえぐり込んでくるB・ドラモンド(ds)の敏捷ワザ、より豪放磊落そうなK・クレイグ(ds)の体当たり的攻勢、もそれぞれに豊かな妙味を揮う一方で、花形役を担う二人のピアニストのいずれもよく歌う抒情性満点のアドリブ奮戦が、晴れやかで旨味溢れる盛り上がりを呈して清々しい。

★T・ヘンダーソン(p)の、ブロック・コード弾きも鮮やかなR・ガーランド的ファンキー・スタイルとマッコイをクール・ソフト化したようなモーダル奏法の折衷っぽいアプローチ(どちらかと云うと本性は前者にありそうで、モード・プレイを推し進めつつもいつしか手癖っぽくファンキー節になってゆく辺りが好もしい)がイキでイナセな「味」を放ち、かたやD・ヴェガ(p)の、エヴァンスやハンコックの成果を踏まえた上でそれを純正ハード・バップ方向へ遡らせた感じの、"詩情"と"浪漫"を持ち味とする繊細でクールかつ洒脱なプレイも風流に冴えていたりと、キャラクターの異なる両者の立ち働きがともにフレッシュ・デリシャスな好調ぶりを見せていてナイス。

1. I Cover The Waterfront 4:45
2. Lviv Perspective 4:57
3. Intro (February) 1:25 (solo bass)
4. February 7:03
5. Work 4:43
6. Tenderly 8:18
7. The Answer 7:47
8. Waltz For J 6:44
9. Satellite 4:56
＊all compositons by Ilya Osachuk (Osachuk Music Publishing,SOCAN)exept I Cover The Waterfront by Johnny Green and Edward Heyman (WC Music Corp,ASCAP),Work by Thelonious Monk (Thelonious Music Corp.,BMI),Tenderly by Walter Gross and Jack Lawrence (Morris-Edwin-H-Co Inc.,ASCAP),and Satellite by John Coltrane (Public Domain).all arrangements by Ilya Osachuk.

Tyler Henderson (piano on 1, 2, 5, 8, 9)
Donald Vega (piano on 4, 6, 7)
Ilya Osachuk (double bass)
Kai Craig (drums on 1, 2, 5, 8, 9)
Billy Drummond (drums on 4, 6, 7)

2023年9月21日,2023年12月15日,2024年3月29日米ニューヨークのジュリアード音楽院(The Julliard School)での録音

レーベル：自主製作

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