★八十代後半に差し掛かるもなお意欲的に、意気軒昂に音楽的冒険に挑み続けて生鮮バリバリな、フランス・ジャズ界を代表するモダン・ドラムのヴェテラン大御所:ダニエル・ユメール(1938年スイスのジュネーヴ生まれ)の、今回は、ヴァンサン・レ・カン(ts,ss)&ステファン・ケレクキ(b)とのレギュラー・トリオにスイスの逸材:サミュエル・ブレイザー(tb)を招いた(ユメールとブレイザーは過去にも共演録音があったツーカーの仲?)カルテット基本での一作。
★シャープで精細かつ爆発的ダイナミズム溢れるドラムの、ある時は動きも烈しくゲリラティックに迫り、またある時は妖しくじっくりと躙り寄ってくる遊撃攻勢や、弾性とウネりを効かせて撥ねるように太く波打つベースのドライヴィング鳴動、に上手く触発される恰好で、フロントに立つテナー(またはソプラノ)とトロンボーンの、スピリチュアルとアブストラクトの間を自在に往来するダーク&ミステリアスなインプロヴィゼーションが狂おしくも詩情豊かに見せ場を飾ってゆく、全般にモード系ポスト・バップのグルーヴィーさとフリー・ジャズの乱脈っぽさが絶妙に掛け合わされた音世界をフレッシュ・スリリング&サスペンスフルに、そしてノリよく興奮をもって愉しませる中々ユニークな敢闘内容。
★1曲1曲は概ね簡潔にまとめられて快テンポで進行してゆき、アウトラインはフリー系に寄せている(テイストは全く異なるがかつてのオーネットやドルフィー辺りにも底通するような所謂"ニュー・ジャズ"の趣があったりする)ものの先ず何よりユメールのドラムがノリノリにスイングしていることもあって云わばヨーロッパのフリーの典型からは外れ、また浮遊感渦巻くスペイシーな心象スケッチ風インタープレイも度々現れたりと、トータル的には甘くなくシリアスではあるがしっかりスピリチュアル&ポエティックな道程が、結構トントン拍子の歯切れよさでテイスティーに満喫できる寸法だ。
★苦味走った陰影濃い唸り吠えの中にコク深い情魂を覗かせるレ・カン(ts,ss)の、ふんわり軽やかな遊泳感覚と重厚なドライヴ感を表裏一体化させた思索瞑想的吹鳴や、怪しく不穏に霧笛を鳴らすようなブレイザー(tb)のスモーキー・グルーミー・ブロウ、がそれぞれに吟醸感ある味わい豊かな魅力を放っているが、しかし個々のソロ云々よりもむしろグループ全体のサウンドに顕れる独特の"暗いアヤしさ"並びにリーダーであるユメール(ds)自身のちょっと鬼神めいた雷撃ワザのキレ、にこそ無双の妙味が、本領が発揮されている印象があるという、まさしくユメールにしか到達できぬであろう異彩溢れる音景色のあり様は見事。
01. New (Amuse-Bouche) 0:48
02. For Flying Out Proud 3:07
03. Lyria Inn 4:03
04. Free 1 1:46 (ts-tb-ds trio)
05. Give Me Eleven 5:16
06. Abstract Bass Bone 3:29 (ts-tb-ds trio)
07. Cavatina 4:08
08. Free 2 "Dark Choc" 6:13
09. Salinas 3:23
10. Missing A Page 4:55
11. Drama Drome 4:26
12. Saint-Cyr 3:18
13. Triple Hip Trip 4:14
14. New (Pousse-Café) 0:52
Vincent Lê Quang (tenor saxophone except 01, 12, 14) (soprano saxophone on 01, 12, 14)
Samuel Blaser (trombone)
Stéphane Kerecki (bass except 04, 06)
Daniel Humair (drums)
2024年5月-6月Triton / Studio AGC録音
レーベル:
Le Triton
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輸入盤CD
入荷予定時期:2024年11月下旬
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