★ソフトでハートウォーミングな、肩の力の抜けた自然体の抒情的スインギー唱法に独自の深い妙味を発揮、1930年代から50余年に渡って地道に充実のキャリアを生き抜いた人気黒人女性歌手:マキシン・サリヴァン(1911年米ペンシルヴェニア州ホームステッド生まれ、1987年ニューヨークシティで死去)の、本盤は、晩年の来日時を捉えて1985年1月東京でスタジオ録音された、スコット・ハミルトン(ts)がフィーチュアされる他ジョン・バンチ(p)やクリス・フローリー(g)らの腕達者陣がバックを務めてのコンボ・セッションの傑作(All Art/キングレコード原盤)、のCD化・新装再発(限定)版。
★しなやかな張りと柔らかな丸みが渾然一体化し、清爽さの中に微妙にしゃがれ掠れた年輪っぽさも仄めかせる、何とも味のある声質による一語一句・一声一声に丁寧に情感を込めてテンダー&ブルージーな寛ぎ節を綴る、優しく柔和な真心に溢れながら同時にサラリと恬淡に軽く流すような達観めいた趣もあるリリカル歌唱が、小粋で瀟洒で余情豊かな"風流の極み"とも云うべき華を成し、ソフト・スムースな波乗り調子の中に雄々しきガッツも覗かせるテナーや、控えめで気配りに長けた折り目正しい立ち居振る舞いに終始しながらアジな含蓄を滲ませるピアノ、淡々とした精緻なリズム・カッティングとメロウ・グルーヴィーなイナセ肌の旨口フレージングを上手く使い分けるギターら、インスト陣の美味しさのエッセンスをギュギュッと濃縮した感じの敢闘ぶりも、ハマるべきツボへピタリとハマりきった、全編温かでハートフルな、そして気さくそうな人情味満点の快演が続いてホッと一息つかせてくれる白眉の安心内容。
★決して奇を衒わない温厚穏和げなモダン・スイング・スタイルに乗せた、インティメイトなリラクゼーションと歯切れのいいダイナミックなグルーヴの共存する、ちょっぴり古風でノスタルジックでもある大衆派娯楽路線の鑑とも云える和気あいあいの行き方、が溌溂と愉しそうに続き、演奏勢にもバランスよく見せ場の振られる中々色彩感に富んだ道程の中で、やはり何より主役:サリヴァン(vo)の、朝飯前の脱力遊泳気分を醸成し続けつつ奥深い行間雅趣をじんわり立ち昇らせる、さすが熟練の歌表現が丹念であると同時にあくまでチョチョイのチョイと事も無くその極意を示していて傑出している。
→一貫して歌詞とメロディーを大切にし、ブルースに由来したアーシーな吟醸感や哀愁、バップ・ヴォーカルならではの鋭敏な躍動性〜ダイナミズム、なども絶妙の匙加減、絶妙のタイミングでごくナチュラルに、かつ濃やかに盛り込んでゆく、トータルなアウトラインとしては肩肘張らずにゆったりと落ち着き寛いだ、丹誠と機智溢れるどこまでも「軽妙な」歌声キャラにすんなり着地させ、後にはちょっと幽玄っぽい渋めの余韻が好もしく残る、というひたすら流麗滑脱で無理のない、ソフィスティケイトされたその語り口はウ〜ム格別。相手役を務める当時30歳だったS・ハミルトン(ts)の、ここ最近の悠然とした佇まいとは違って未だヤング・フレッシュな"熱さ"を残した吠えっぷりや、隅々まで心遣いの行き届いた細かな働きで"助演ソロイスト大賞"モノのJ・バンチ(p)の洒落た活躍、といった辺りも大いに聴きもの。
01. ユー・ワー・メント・フォー・ミー
02. アイ・ソート・アバウト・ユー
03. グッディ・グッディ
04. サムシング・トゥ・リメンバー
05. 苦しみを夢にかくして
06. ユー・アー・ア・ラッキー・ガイ
07. ジョージア・オン・マイ・マインド
08. バイ・マイセルフ
09. アイ・ゴッタ・ライト・トゥ・シング・ザ・ブルース
10. ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングズ
11. ヒーズ・ファニー・ザット・ウェイ
Maxine Sullivan マキシン・サリヴァン (vocal)
Scott Hamilton スコット・ハミルトン (tenor saxophone)
John Bunch ジョン・バンチ (piano)
Chris Flory クリス・フローリー (guitar)
Phil Flanigan フィル・フラニガン (bass)
Chuck Riggs チャック・リッグス (drums)
1985年1月28日P.S.C.スタジオ東京録音
*原盤:All Art / キングレコード K26P-6345
レーベル:
Solid ウルトラ・ヴァイヴ (Ultra-Vybe) All Art
在庫有り
国内制作・限定生産CD