★デンマークのジャズ・シーンにおいて長きに渡りブラジリアン・ボッサ・ミュージックの演奏に打ち込んできた(StuntやCalibrated、Rip Curl等に優れた吹き込みを残す)ヴェテラン・ピアニスト:ステーン・ラスムセンの、今回もまたブラジル音楽をテーマとし、ブラジル随一の辣腕ドラマー:セルソ・デ・アルメイダを迎えたピアノ・トリオを基本に、一部ゲスト陣(女性ヴォーカル〜コーラス、トロンボーン、ギター)(LP版はヴォーカル〜コーラスのみ)も加えつつ、1曲(黒いオルフェ)を除いては全て自作のボサノヴァ・ナンバーを奏したコンセプチュアル作品。
★骨太くカキコキと鋭角的キレのよさを呈する、重心もしっかり据わった透明感と濃い陰影が微細に交錯するストーン・タッチのピアノが、軽快なサンバのリズムに乗って半ば打楽器的鳴り様を活かしたクールで淡彩っぽいブラジリアン特有のサウダージ醸成であったり、それに加えて高音のブロック・コードを使ったファンキー・ブルース風の寛ぎ小唄っぽい吟醸節であったり、腰を据えて詩人然と甘美な哀愁ロマンティシズムを映し出すしっとりしたデリカシー溢れるバラード表現であったりと、一貫して旋律センスとリズム感に長けしかも力を抜いて敢えて味を薄める辺りの匙加減も絶妙な、軽みとウィット抜群の涼しげパステル調メロディック・プレイをごく抵抗なく流れるように綴って爽やかな魅力を揮い、
一方、堅実に安定律動しつつさりげなく芸の細かい変化のつけ様も見せるドラム&ベースの表情豊かなサポートも中々きららかに光った、全体を通じブラジル音楽と現代北欧抒情派ジャズが上手く折衷された音景色を快適に、かつ幽玄深く愉しませる、その巧まぬニュアンスの奥行きが絶品の充実内容。
★リズム・スタイルはサンバ一辺倒でなく多様に推移し、スロー・バラードもボッサと並んでもう一つの柱を成す、メロウでテンダーなどこまでも抒情指向・歌心重視のリラックスしたロマネスク妙演が脱力調子で滑らかに進められてゆき、1曲1曲はわりかし簡潔にまとめられたテンポよくトントン拍子に流れる道程の中、S・ラスムセン(p)の一聴淡々としていながら濃やかな機微の振るわれたアドリブ妙技が、行間にも富んだ懐の広い熟練の冴えを見せて全く素晴らしい。
→先ず第一に、ブラジリアン・ミュージックを奏する上で欠かせない、涼やかでやや淡泊なサラリとしたライト&ソフト感漂う仄かに翳ってもいる憂愁描写のあり様が、本場ブラジルのミュージシャンにも勝る細密な完成をひたすらクールに示している点に大いに驚かされ、第二にそれとはまた掛け離れて北欧耽美浪漫派の本領を発揮した繊細柔和な奥深いポエティック情景の表出力〜掬い取り具合(ちょっとルイス・ヴァン・ダイクのブルージー面に通じるところがあったりもする)にもワン&オンリーの妙味があって、この線で一本立派なトリオ・アルバムとかも出来そうで二度びっくり、といった風で、ボサノヴァの本質に鋭く迫りながら独自のリリシスト感覚に確固と裏打ちされてもいるその弾鳴、その個性は清新至極にして説得力絶大だ。この決して気負わず軽く流す感じがいかにもボッサらしくて素敵。
SIDE A
1. Ton To Ton
2. Hymn To Life
3. Red Bossa
4. Baiaozinho
5. Silence (solo piano)
SIDE B
1. Bossa Para Joyce
2. Happy Sadness
3. Home
4. No Mais, Geraes
5. Manha De Carnaval (♀vo-p-per)
Steen Rasmussen (piano)
Kaspar Vadsholt (bass except 05, 10)
Celso De Almeida (drums,percussion except 05)
guests:
Marilda Almeida (vocal on 10) (background vocal on 09)
Clara Emilie Wessberg Rasmussen (background vocal on 09)
2023年7月デンマーク-コペンハーゲンのヴィレッジ・レコーディング録音
2024年デンマーク作品
レーベル:
Stunt
在庫有り
輸入盤LP