★米NYシーンで活躍するフランス-パリ生まれのクロマチック・ハーモニカの使い手:イヴォニック・プルネ(2006年にプロ・デビュー、SteepleChaseやSunnysideにリーダー吹き込みがある)と、すっかりヴェテランの貫禄がついてきたオールラウンドな米正統派モダン・ピアノの実力者:ジェフ・キーザー(1970年米ウィスコンシン州オー・クレール生まれ)、のデュオによるアントニオ・カルロス・ジョビン(並びにその取り巻き一派による)名曲集。
★滑らかに丸みある流線形を描きながら所々鋭いアタック〜パンチを利かせてくるところもありの精確で端正な鳴り様を呈するハーモニカが、哀愁の歌謡性に溢れつつモダニッシュ・バップ・ミュージックらしいグルーヴやブルース由来の旨味にも富んだ均整ある詩的メロディック・プレイを綴って、爽やかな中にちょっぴりロンリネス仄めくアジな華を成し、一方、濃やかに制御を効かせて折り目正しくこのハーモニカを盛り立て、同時にハード・バップ〜リアル・ジャズならではの陰影豊かかつ硬質・鋭角な殺陣アクション並びにエレガンス&ロマンティシズム表現で音場をキリッと引き締めるピアノの働きも、結構重厚でコクのある魅力を悠然泰然と放った、全体を通じ柔和さとソリッド感が絶妙の按配で融和した抒情世界をノリよく歯切れよく愉しませる快演内容。
★明るく晴朗でいてメランコリックなところもある中々多彩な美旋律性と、バップ・ジャズらしい敏活でダイナミックな律動性〜スイング感、を何より大切にした、至って親しみやすい小粋な人情味溢れるリリカル演奏が流麗に展開してゆき、ジョビン集とは云っても本場ブラジリアンのようなサウダージ傾向は比較的希薄で、むしろアメリカン・コンテンポラリー・バピッシュ路線へ大きく引き寄せられた印象のポエティック・グルーヴィーな行き方が続く中、大凡のところはプルネ(hca)の幾分ソフト&ライトなサウンド・イメージとキーザー(p)の骨太く角張ったヘヴィー&スクエアーな個性がコントラスト鮮やかに拮抗する、という構図ではあるもののそれ一辺倒ではなく、プルネの方が硬質バッパーらしさを発揮したりキーザーがメロウ・テンダーな耽美派ぶりを見せたりの局面も多々あり、一本調子に陥らぬ微細なニュアンスを感じさせる道程がフレッシュに味わえる寸法だ。
★プルネ(hca)の、トゥーツ・シールマンスの流れを汲みながらもより硬派なハード・バップ・センスや今日流のポップ・フィーリングを豊富に加味した、アウトラインはあくまでマイルド・テイストの清々しい歌いっぷりが鮮度抜群のスター性〜花形らしさを揮っていて秀逸で、かたやキーザー(p)の、ハードでダークネス漂う分厚いダイナミック・スウィンギン攻勢で先ずは足場をしっかり固めつつ、転回としてクラシック・ピアノ由来っぽい荘厳優雅な浪漫描写やそれとモーダル・アグレッシヴな熱血立ち回りワザを折衷したようなアプローチなどで好もしく意表も衝いてくる、という決して"助演"の枠にとどまらない創意工夫を凝らしたユニークな活躍もまた卓抜。
1. Triste 4:52
2. Proezas De Solon 3:29
3. Dans Mon Île 5:09
4. Vagues à Lames 4:11
5. The Girl From Ipanema 2:59
6. Too Many Notes 5:27
7. Tide 3:37
8. Desafinado 3:56
9. Double Rainbow 4:07
Yvonnick Prené (chromatic harmonica)
Geoff Keezer (piano)
2023年11月17日米ニューヨーク州マウント・ヴァーノンのOktaven Audio録音
2024年作品
レーベル:
Sunnyside
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デジパック仕様CD