★豊かな情感とシャープな硬質性を併せ持った翳りあるビタースウィート風味の芸風・作風に奥深い本領を発揮する、アメリカン・モダン・トランペットの別格詩人=ヴェテラン名手:トム・ハレル(1946年米イリノイ州アーバナ生まれ)の、今回は、馴染みのマーク・ターナーにデイナ・スティーヴンスという二人のテナーサックス奏者が入れ代わりで現れ、4曲にはギターも参入、加えて鍵盤のルイス・ペルドモはピアノの他エレピやオルガンも弾く、という、けっこう変化に富んだコンボ体制によるまたフレッシュな一編。
★息の合ったスマートな2管アンサンブルに続いて、しなやかな張りや鋭いキレと脱力感や掠れが渾然一体化した何とも味のあるトーンのトランペットが、流れに身を任せるような自然体調子で詩情とグルーヴ溢れる陰影豊かなリリカル・プレイを滑脱に綴って、平明でいて奥行きに富んださすが熟成度満点の魅力を放ち、クール・スムースな浮遊感漂うテナーもしくは熱気を孕んだアグレッシヴなテナーや、妖しい幻想ムードとファンク色を醸し出すエレピ、抑えを利かせてソリッドにダイナミズムを体現するピアノ、潤いとグルーヴィーさ兼備のギター、らの活躍も各々きららかに存在感を際立たせた、全編コンテンポラリー・ハード・バップの正統らしい抒情指向のアクティヴ快演が続いて小気味よくノセ、また深い情感を堪能させてくれる充実内容。
★歌心と今流のスイング感を大切にした、ブルース・フィーリングやバップ・スピリットも自ずと潤沢に備えるリリカル・アクション・タイプの躍動的メロディック奏演、がイキイキと精悍そうに展開してゆき、リズム・セクションのツボを心得たノリよくもスリリングな機動力抜群の敢闘に上手く触発される恰好で、ハレルを筆頭とする銘々の気魄十二分にしてリリシズム重視のアドリブ奮戦が、中々多彩に豊饒ぶりを呈して大いに愉しませる。
★とりわけハレル(tp)の、気力は充実しきっていながらリキんだところは微塵もなく、ごく平易に、ナチュラルに得意技を披露するのが楽しくてしようがない(或いは達観したともとれる)、といったような、チェットやマイルスの抒情面の成果をハレル流に編み直した感じの、一貫して力の抜けた巧まぬ、がしかし鮮やかに構成されてもいる軽みの極致とも云うべき淡麗なる(それでいて端正で丹念な)語り口が圧巻の煌めきを見せていて、他のサイドメン達を霞ませてしまうほどの孤高の妙味を揮っており全く見事で、これを追うターナー(ts)の遊泳し・たゆたいながら心象風景の深淵を映す半メディテイティヴ・プレイや、スティーヴンス(ts)の抑制された中に生々しいパッションを見え隠れさせるエモーショナル妙技、ペルドモ(p)の硬質・鋭角な立ち回りで全体に筋金を入れる風な引き締め役ぶり、といった辺りもハレルには及ばぬもののしっかり清新な輝き&旨味を放っていて歯応え充分。
01. Miramar
02. Peanut
03. Alternate Summer
04. Intermezzo
05. UV
06. Chalcedon
07. Heliotrope
08. Plateau
09. Wind
10. Radius
Tom Harrell (trumpet)
Mark Turner (tenor saxophone on 01, 02, 03, 09, 10)
Dayna Stephens (tenor saxophone on 04, 05, 06, 08)
Charles Altura (electric guitar on 02, 05) (acoustic guitar on 03, 07)
Luis Perdomo (piano on 04, 06, 07, 08, 09, 10) (electric piano on 01, 02, 03) (B3 organ on 05)
Ugonna Okegwo (bass)
Adam Cruz (drums)
2024年アメリカ作品
レーベル:
HighNote
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