★ブラック・スピリチュアル・ピアノの異才:マル・ウォルドロン(1925年米ニューヨーク市生まれ、2002年ベルギーのブリュッセルで死去)の、1972年夏の来日時、日野皓正(tp)(1942年旧東京府生まれ)率いるコンボ(植松孝夫-ts,鈴木勲-b,日野元彦-ds,今村祐司-perという強力な布陣)と組み、8月14日東京のビクター・スタジオで吹き込んだ日本制作のレア傑作(ビクター音楽産業株式会社 SMJX-10155)が英BBE Musicから奇跡の復刻。
★鋭く突き刺さる尖った硬質タッチのピアノが半記号的力学フレーズを繰り返しながら少しずつ変化させてゆく感じのダイナミック・プレイで、一種独特の妖しい情念っぽさを音空間に充満させ、一方、破裂力・爆発力満点のワイルドなトランペット・ブロウや、スピリチュアリティみなぎる荒々しいテナー咆哮、熱いエモーションをバネとウネりの利いた撥ねるが如き躍動で体現する肉太ベースの轟鳴、などもそれぞれこってり濃厚な旨味と存在感を堂々揮いきった、トータルとしてはダークでコク深いピアノと敏活鮮烈なトランペットの迫真の拮抗を核とした情魂アクション・ロマンの世界が力強くも生々しく創出されてゆく、興奮度抜群の敢闘内容。
★ウォルドロン特有の暗黒のミステリアス傾向と日野(tp)〜植松(ts)ラインの勇猛精悍な和流テイストが上手く掛け合わされた、全体像的には1970年代スピリチュアル・ジャズの一典型らしい硬派軒昂でエネルギッシュな大熱演が展開され、登場するや音世界をグルーミー&ノワールなウォルドロン色に巧まず染め上げてしまうさすがウォルドロン(p)の強烈な驀進ぶりと、ハード・バップを突き抜けて70年代のリアル・ジャズたる新風を呼び込まん・巻き起こさんとする日野皓正(tp)のピリッとした雄叫び、とが静かな鬩ぎ合いを見せながら推し進められてゆく行軍の様が、雄渾の壮大スケールと濃い吟醸味をもってアツい浪漫を歌い上げており、理屈抜きで大いに昂揚させられる。
★ウォルドロン(p)の、あくまでマイペースを崩さずジワリジワリと徐々に登り詰める得意の"ウォルドロン節"の繰り出しっぷりが、何げにヤバイ沸騰具合を示していて圧巻で、かたや日野皓正(tp)の、バップ・アクションを出発点としながら1972年時点ならではの"サムシング・ニュー"或いは日本人的情感を多分に加えるその、創意工夫に富みつつ自然体らしさも決して失わない凛としたストーリーテリングの妙がまた絶品。野獣のような猛々しさで壮烈に吠える植松(ts)のアグレッシヴ燃焼ぶりも好インパクト。あと、2曲目=B面でエキゾティックに暴れまくり舞踏しまくる今村(per)の灼熱の奮戦もナイス。
Side A:
1. Reminicent Suite: Dig It Deep Down Baby 〜 Echoes 〜 Once More With Feeling
Side B:
1. Black Forest
Mal Waldron マル・ウォルドロン (piano)
Terumasa Hino 日野 皓正 (trumpet)
Takao Uematsu 植松 孝夫 (tenor saxophone) (flute on B-1)
Isao Suzuki 鈴木 勲 (bass)
Motohiko Hino 日野 元彦 (drums)
Yuzi Imamura 今村 祐司 (percussion on B-1)
someone (ethnic flute? on B-1)
1972年8月14日東京Victor Studio録音
(原盤:Victor = ビクター音楽産業株式会社 SMJX-10155)
レーベル:
BBE Music
★帯付き国内仕様輸入盤(180g重量盤)LP (解説は付きません)
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