★ひたすら律儀に仁義を重んじる風な、筋金入りの生粋バッパーで鳴らした一徹職人的な質実剛健ピアニスト：タード・ハマー(1958年米ニューヨークシティのクイーンズ区生まれ)の、本盤は、2017年のCellar Live作「Swinging On A Star」でも組んでいたリー・ハドスン(b)＆スティーヴ・ウィリアムス(ds)との鉄壁トリオによる、更に熟練した一編。
★ゴツンと固く角張った、陰影も濃い岩石を転がすような堅牢タッチのピアノが、先ずは伝統的バップ・ピアノの定番イディオムに則ったソリッド&スクエアーな殺陣の型っぽい分厚く強靭なるダイナミズム表現を根幹に据えて、音場・道筋をタフに、ストロングに確たるものとし、味つけとしてアメリカン歌物の王道らしい軽みある粋な小節であったり、ブロック・コード等を活用した寛ぎファンキー・フレージングであったりの、いずれもブルースを出発点としたメロディックな文体を程好く滑り込ませて上手くその流れをほぐし、聴く者を和ませ、トータルとしてはあくまで硬派で精悍な屈強の個性を保った渋めのテイスティー・プレイを中々頑として紡いで、揺るぎなく骨芯の据わった堂々たる華を成し、ベース&ドラムの安定感ある太い律動ぶりに適宜遊撃性・奇襲性も加味した瞬発力抜群のサポートも、ガッチリ頼もしくドッシリ重み充分にノリとスリルを強化しきった、全編バップ・ピアノ・トリオの鑑とも云える真っ向勝負の進撃が続いてスカッと壮快に胸躍らせ、ちょっと燻し銀的な吟醸感をも満喫させてくれる会心打内容。
★歌心とスイング感に潔くポイントを絞り込んだ、ブルース・フィーリングやバップ・スピリットも自ずと潤沢に備える、大衆派娯楽路線の理想形たるとことんシンプル・ストレートな、人情味と重厚なストロングネスが音空間を確固と貫く明快この上なしのダイナミック・ハード・バップ・アクション大会、が嬉々溌溂とクッキリした輪郭で展開してゆき、雄渾のスケールと逞しさ、加えてくすんだようなスモーキーなシブさや翳りに彩られた男臭い剛健たる道程の中で、ウネるハドスン(b)やドシャバシャ迫るウィリアムス(ds)の奮闘も光るが、何より主役ハマー(p)の1ミリの迷いも妥協もない頑固一徹バッパーぶりが圧倒的濃さで"醸熟映え"を見せていて、理屈抜きに傑出している。
→バド・パウエルやバリー・ハリス辺りの流れを汲んだ硬質強固で鋭角的な力学手法を変らず基調とし、転回としてレッド・ガーランドやジーン・ハリスなどに通じるダウン・トゥ・アースでイナセげな"ファンキー筋"のソウルフル文体を適所適量加える、という、ごく一部で繋ぎにモード的語法のダイナミック技やリリカル路線曲ではエヴァンス似のフレーズを盛り込むところもあるものの、いい意味であまり長続きはせずすぐまた手癖っぽくバピッシュ&ファンキーな文脈へ立ち返ってゆく、そうした、「バップとブルースさえあれば他は何も要らない」的なタフガイの不器用さを露呈した強硬でニガみ&蔭りある融通の利かなそうな弾鳴キャラは、魅力満点で説得力も絶大だ。お見事。
01. I Didn't Know What Time It Was (Richard Rodgers and Lorenz Hart)
02. They Didn't Believe Me (Jerome Kern)
03. Smooth As The Wind (Tadd Dameron)
04. Down Through The Years (Clifford Jordan)
05. I'm An Old Cowhand (Johnny Mercer)
06. Moonlight (Tardo Hammer)
07. Lonely Town (Leonard Bernstein, Betty Comden, Adolph Green)
08. Epistrophy (Thelonious Sphere Monk, Kenneth S. Clark)
09. My Ship (Ira Gershwin, Kurt Weill)
10. Dear Old Stockholm (Traditional)
11. I See Your Face Before Me (Howard Dietz, Arthur Schwartz)
Tardo Hammer (piano)
Lee Hudson (bass)
Steve Williams (drums)
2023年12月12日米ニューヨーク州マウント・ヴァーノンのOktaven Audio録音
2024年作品
レーベル：
Jazz Bird Records
在庫有り
デジパック仕様CD
