★長年に渡り様々なフォーマットで共演を重ねてきた、エリック・アレクサンダー(ts,ss)(1968年米イリノイ州ゲイルズバーグ生まれ)とマイク・ルドン(p)(1956年米コネチカット州ブリッジポート生まれ)の名コンビによる、今回は差し向かいのデュオ演集(各々のソロ演奏トラックもある)。
★力八分目でスムースに流れるような丸みある風合いを基調としながら、並行してより重圧力に溢れた太い渦巻き様のハード・ドライヴ感をも自然に揮って見せる、歌心とブルース・フィーリングそしてバップ(&モード)・スピリットに満ちたテナーの滑脱プレイが雄々しくも悠然と懐深げな魅力を放ち、一方、鋭角的キレのよさと硬質性を備えたストーン・タッチ・ピアノの、やや音数多めにダイナミズム全開で攻勢を掛けてくるわりかしモーダル・スピリチュアルなところのある敏活エネルギッシュ弾奏も、適度に饒舌で分厚くスケールの大きな確たる妙味を示した、全般に無双の花形たるテナーと何げにニュアンスに富む抑えのピアノとが互いの凹凸に上手くハマり合う風なコンビネーションを発揮して、メリハリある劇的抒情世界を創出した中々の高密度内容。
★メロディーの端麗さとゆったり揺れ波打つスイング感を何より大切にした、基本はリリカル指向の親しみやすい娯楽的ハード・バピッシュ奏演が和気あいあい(←さすがに気心が知れていそう、深く通じ合っていそうな雰囲気だ)にしてピンと張り詰めたシャープな息遣いを伴いつつ力強く展開してゆき、歌物を優しくマイルドに自然体で解釈するのと同時に硬派軒昂な気概・気魄も決して失うことがない、というバランスのとり方はアレクサンダーの"ジェントル・バラッズ"・シリーズに相通じるものがある、ハートフルかつ雄渾なる道程の中で、両雄の奇を衒わず真っ向勝負で哀愁やガッツを唄い上げるアドリブ妙技が、ごく明朗でいて丹念な誠心こもった醸熟の豊饒世界を形作って卓抜だ。
★アレクサンダー(ts)の、ケレンを排してナチュラルにただ呼吸するかのような、それでいてその一音一音には揺るぎない確信が感じられ、巧まず構成力にも長けたダイナミック・ドライヴィングかつ脱力したゆとりやウィットっぽさをも漂わせつつの堂々こなれた(しかもしっかりスリリングな)ストーリーテリングの粋が、音色自体に顕れる理屈を越えた圧倒的スター性とも相まって実に鮮やかな煌めき(+芳醇な旨味の醸出)を見せており、かたやルドン(p)の、デュオ・トラックではアレクサンダーを上手く煽り触発するマッコイのソフト・スマート化的なモード・プレイでエモーショナルに迫り、ソロ・ピアノ曲ではより深い思索性や半内省感を湛えたバラード表現に余情豊かな奥行きを示す、という、さすが百戦練磨の粋渋なる語り口も絶品。
★加えて、アレクサンダーが珍しくソロでソプラノを吹く#2での、ちょっとスティーヴ・レイシーっぽかったりシドニー・ベシェ寄りだったりの翳りあるビタースウィートな吹奏術にも冴えた新味がある。
1. For Mabes (ts & p)
2. Autumn In New York (solo ss)
3. Round Midnight (ts & p)
4. I'm In The Mood For Love (ts & p)
5. Lost But Not Forgotten (solo p)
6. Mutation (ts & p)
7. Mary (solo p)
8. The Nearness Of You (ts & p)
9. Two In One (solo ts)
Eric Alexander (tenor saxophone except 2, 5, 7) (soprano saxophone on 2)
Mike LeDonne (piano except 2, 9)
2023年7月15日米ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのVan Gelder Studio録音
レーベル:
Cellar Music (Cellar Live)
Eric Alexander & Mike LeDonne 共演作
在庫切れ 可能な限りお取り寄せ致します
見開き紙ジャケット仕様CD
VIDEO