★1970年代から半世紀に渡って活動し、これまで、Odin、Tauras、Resonant、Losen等よりの諸作にいずれも高い評価と幅広い支持を集めてきた、お馴染みノルウェーの人気ヴェテラン・ピアニスト:ダグ・アルネセン(1950年ノルウェー-ホルダラン県ベルゲン生まれ)(ベルゲン違いか?)の、今回は新生トリオによる自作曲集。
★折り目正しく精緻でキレと重みある、一弾一弾丁寧に強度・濃度を保ちながら石を転がしてゆくかのような、適度に硬質で鋭角な、端麗さの中に精悍さも感じさせるクリアー・タッチのピアノが、北欧流フォーキー牧歌調のマイルドな節回しや大筋ではエヴァンスもしくはハンコックの流れを汲んだ耽美的ロマンティック文体と、よりハード&ソリッドなバップ・イディオムやモード・イディオム(またある時はモンク・スタイル)に則った殺陣風の凹凸感ある力学的立ち回りワザ、をバランスよく掛け合わせ、或いは各々切り離して究極を行く、トータルとしてはアクション型リリカル指向の正統らしく詩情豊かだが甘すぎず翳りと苦味ある彫りの深いメロディック・プレイ、を歯切れよく綴ってちょっぴり渋い幽玄漂う典雅な華を(ゆとりをもって中々悠々と)成し、ウォームで雄弁なベースやシャープで粛然と構えるドラムらの機略縦横にしてツボを心得た働きも、実に的確にグルーヴとスリルを強化しきった、全般に現代抒情派ハード・バップの本道たる快演が横溢して清々しく昂揚させ、ノセ、また感動させるスッキリとした会心打内容。
★歌心とスイング感を何より重んじ、フォーク・フレイヴァーに繋がるブルース・フィーリングや伝統的バップ・スピリットも自ずと潤沢に備わった、リズム・スタイルは4ビートからファンクまで当世らしく多様に変移する、幾分ビタースウィートな味わいのバップ美学とリリシズムに貫かれた正攻法勝負の邁進が好テンポで溌溂と展開してゆき、ベース&ドラムの結構ヴォリューミー&ストロングに迫る遊撃鳴動に適宜触発される恰好で、アルネセン(p)の、北欧カラーとメインストリーマー気質を併せ持ったわりかしスクエアーでストイックともとれるアドリブ妙技が簡潔に、かつ行間深く軽々冴え渡っていて見事。
→作曲面こそ北欧の風土色や独自のメディテイティヴな心象スケッチ傾向を感じさせるところもあるものの、一ピアニストとしての弾奏のあり様はロマネスクさ云々よりも至ってストレートアヘッドな主流派ハード・バッパー気質が圧倒的に勝っている印象があり、バップの語法やモンク的奏法を使ったダイナミズム表現も交えながら、基本根幹的には1960年代のハービー・ハンコック辺りに近い"スマート&ジェントルな殺陣力学"を旨としたセンスのいい躍動的フレーズに確たる本領を発揮、そこへノーザン・ユーロ系らしい吟遊詩人風の情緒性を過不足なしに香味っぽく加えて独自のバランスに仕上げる、という、さすがさりげなく十全に年季を積んできたヴェテラン名手ならではの余裕と風格ある浪漫アクション者たるその態は、あくまで明快直球でありつつ何とも云えぬ含蓄に富んでいて絶品だ。
1. A New One 5:48
2. Ice Breaking 4:33
3. Sarah 5:00
4. That's OK 4:52
5. Podstrana 5:40
6. Bim Bam Bom 4:27
7. After Dinner 5:42
8. Jumping Around 4:34
9. A Special Memory 4:18 (p & b duo)
total time 44:54
*all compositions by Dag S. Arnesen
Dag Arnesen (piano)
Magne Thormodsæter (bass)
Øyvind Skarbø (drums except 9)
2023年11月19日-21日ノルウェー-ベルゲンのGriegakademiet Studio録音
レーベル:
Losen
在庫有り
見開き紙ジャケット仕様CD