★1966年にプロ・デビュー、ジョージ大塚カルテットや日野皓正クインテットを経て、1973年頃から自己グループでの活動を本格化、以降長らく多方面で確たる個性と辣腕を揮ってきた、モダン・テナーサックスの鉄人:植松孝夫(1947年東京生まれ)の、本盤は、浅川マキのプロデュースによる"ゼロアワーシリーズ"の一枚として1992年にリリースされた、渋谷毅(p,key,org)&ボビー・ワトソン(elb)&つのだひろ(ds)とのカルテットによるレア作品の復刻。
★骨太く肉厚でごっつり重みのあるトーンのテナーが、ドライヴ感全開で雄々しく渦巻きながらタフ&ワイドに哀愁を歌い、吠える、逞しげでスケールの大きな情感吐露的マイナー・メロディック・プレイを綴って、切々としていつつ颯爽としてもいる味わい豊かな魅力を揮い、ブルージーで折り目正しく機微を感じさせる渋いピアノや、おぼろにエコーするアーシーなオルガン、鋭くも黒っぽくファンク的ビート・グルーヴ感を醸成するエレキベース、手堅く精巧にスイングするドラム、らもそれぞれハマるべきツボへ鮮やかにハマりきった、全編を通じ音空間に漂い続ける柔和で温かな人情味に心地よく身を委ねられる快演内容。
★ひたすらメロディアスでスインギーな、一貫して「ブルース」を基調〜キーワードとしたノリよくも結構和気あいあいのリラクゼーションが潤沢に醸し出される、中々ハートウォーミングなリリカル娯楽派演奏が滑脱に展開され、エレキベース(やキーボード?)のリズミカル躍動がフュージョンもしくはファンクの趣を呼び込むところもあるが、主役:植松(ts)の吹鳴は徹頭徹尾「バップ&ブルース」を旨とするちょっと武骨なまでにヘヴィー・ストロングなタフガイの気概を巧まず発散しまくっていて、その芳醇なるコク深さを呈したブレなく迷いのない真っ直ぐなサウンドのあり様には理屈抜きでがっちりテイスティー・グルーヴィーに魅了される。
→4ビート・スイング型であろうがバラードであろうがコンテンポラリーなフュージョン調であろうが植松のブローイングは終始変らず粋渋ハード・バッパーであり吟醸ブルースマンである、という根幹にはいささかの揺らぐところもなく、ストレートに誠心を込めて太々と大きく唄い、大きくスイングする、そうした、バップ・テナーの本道をしっかりと踏み締めるような潤滑にして悠然としたとことん暖かな人情と旨味溢れる(ごく自然に呼吸するが如き)鳴音は、ちょっとイナセっぽくイカしていてしかも大いに感動的で説得力満点、懐広さもバツグン。時にソフトに、時にソリッド・スクエアーに上手く彩りの変化をつける渋谷(p他)の助演もまた格別。
1. No Certain Terms (5:56)
2. Cry Me A River (4:33) (ts & p duo)
3. What's Happen (2:20) (ts & p duo)
4. I Love You More Than You'll Ever Know (5:40)
5. Sonny Is Blue (6:21)
6. Ja's Love (6:02)
7. A Song For You (5:31)
植松 孝夫 (tenor saxophone)
渋谷 毅 (piano) (keyboard? on 1) (organ on 1, 4)
Bobby Watson (electric bass except 2, 3)
つのだ ひろ (drums except 2, 3)
浅川 マキ (producer)
1992年日本作品
レーベル:
C.A.E. Record
在庫有り
国内盤CD