★過去、藤井郷子のグループを始めとして何度も共演を重ねてきた、田村夏樹(tp)(1951年滋賀県生まれ)とジム・ブラック(ds)(1967年米ワシントン州シアトル生まれ)、という筋金入りのフリー・インプロヴィゼーションの猛者2人=名コンビがガッチリ組み合った四半世紀ぶりのデュオ・アルバム。
★ピリッとしたシャープなキレと張りのある、そして陰影濃く微妙に濁りを帯びたトーンのトランペットが、スピリチュアル&半エキゾティックに哀歌を奏でるようであったり、狂おしい泣き叫びと抽象的音響実験の間を往来するが如き硬質咆哮であったりと、振り幅大きくもどちらかと云うと烈しいエモーションの吐露を身上とした情緒型の即興ワザを繰り出して切迫感ある魅力を放ち、一方、ドシャバシャとけたたましく野獣が暴れ回る風な轟音を次々と爆発させ、獰猛かつアナーキーでありつつしっかりビート・グルーヴ感をも醸成するドラムの瞬発力抜群の立ち働きも、中々歯切れよくノリのいい妙味を揮いきった、全般に阿吽の呼吸で交わされるハードな対話に滅法スリリングに昂揚させられ、また大いに感動させられる極めて密度の高い敢闘内容。
★1トラック1トラックはそう長すぎず適度に簡潔な尺にまとめられた、結構トントン拍子の快調テンポで進むツーカーの敏感さ・感応力に長じたリアル・インプロ交感、が張り詰めたサスペンスフルな息遣いで展開してゆき、田村(tp)の、幾分ノイジーで怪しい奇音めいた吹鳴を繰り出すところもあるものの、基本的にはスピリチュアリティや歌うことを大切にしたプレイ、並びにブラック(ds)の猥雑でワイルドで破壊的な攻勢の中に一種のワールド・ジャズともとれるリズミカルな舞踏っぽいノリのよさをも湛えた鋭利遊撃ヒット!、の相乗効果により、トータル・サウンドはコワモテでアブストラクトではあるけれど一定の情魂っぽさ・情念っぽさや律動感も絶えない、わりかしテイスティー・グルーヴィーな仕上がりとなっていて誠に好もしい。
★田村(tp)の、縦横無尽・変幻自在に宙を舞い、雄叫びを上げる強靭にしてシュールな立ち回りを見せるも、根はスピリチュアル肌で巧まず歌っているその鳴音のあり様が旨味たっぷりに際立っており、かたやブラック(ds)の、騒音・雑音めいたゲリラ・アタックを屈強に貫きながらこちらもまたその本性はエスニック・スインガー気質かとも思える決して"グルーヴ"を犠牲にしない(蔑ろにしない)ノリ具合、もキレよく胸躍る蠱惑性に溢れる。
1. Morning City (3:56)
2. Afternoon City (5:30)
3. City Of Dusk (5:10)
4. City Of Night (8:05)
5. Quiet City (5:58)
6. Noisy City (4:08)
7. Calm City (8:15)
8. Bright City (4:18)
9. Bonus (1:48)
*all composed by Natsuki Tamura(BMI)
Natsuki Tamura 田村 夏樹 (trumpet) (voice on 4, 8) (possibly percussion on 4)
Jim Black ジム・ブラック (drums) (possibly percussion on 7)
2023年11月スイス-ベルンのThe Zoo Studio録音
レーベル:
Libra
在庫有り
国内制作(紙ジャケット仕様)CD