★ここ近年首都圏シーンで頭角を現してきている注目の俊英であり、レコーディング上も自己単独名義の他、井上銘とのデュオや竹村一哲のDOD作品等でも冴えた腕前を発揮、また映画「白鍵と黒鍵の間に」の劇伴音楽を担当したことでも話題を集めていた、登り調子の個性派ピアニスト&コンポーザー:魚返明未(おがえりあみ・男性)(1991年東京都生まれ、2017年東京芸術大学音楽学部作曲科卒業)の、サード・アルバムとなる本盤は、ベース&ドラムとのトリオによる自作曲集。
★滑らかさや潤いと歯切れよさやドライ(乾き)感をバランスよく併せ持った、適度に硬質で端正な重心のしっかり据わった一弾一弾を精確にヒットするクリアー・タッチのピアノが、モード系リリカル派の正統らしく耽美性と力学性を表裏一体化させた、ダイナミック・アクションの最中にメディテイティヴな内省感の深淵を覗かせたりもする、メロディアスだが決して甘すぎず制御の利いた終始一定の思索性を匂わす詩情と浪漫とインテリジェンスに溢れたアクティヴ・プレイをキレよく堅牢に綴って、瑞々しくも凛とした鮮度抜群の魅力を放ち、ガッチリ強靭に律動スイングしながらちょっと妖しく躙り寄り絡みついてくるドラム&ベースの、リアル・インタープレイ傾向とゲリラ攻撃力に富んだ機略縦横のサポートもサスペンスフルかつグルーヴィーに妙味を際立たせた、全般にけっこう硬軟剛柔の落差の烈しい劇的・激動的熱演が繰り広げられて、大いに揺さぶられ、昂揚させられ、また繊細な端麗美にも魅了される気魄のこもった敢闘内容。
★「抒情派アクション」を基調としているものの抒情面とアクション面を均整よく併合した行き方のみならず、アクションに徹底特化した半アブストラクトなまでの強硬大立ち回り攻勢が容赦なく炸裂したり、反対にしっとりとしたメロウ・ムーディーで仄暗い哀愁バラードもあったりと、わりかし極端から極端へ行き来する風な全力全霊の妙演が鋭く展開して、清新味と迫真スリルの途切れない道程の中、バネを効かせて大きくウネる高橋(b)や精緻に急所を衝いてくる風な剃刀並にシャープな中村(ds)、らに上手く触発される恰好で、魚返(p)の腰を据えて伸びやかに躍動し、詩を吟じ歌う魂のこもったアドリブ奮戦が、一つ突き抜けた感じの精悍で爽やかな"超フレッシュ映え"を見せて思いの外すがすがしい。
→ハンコック、エヴァンス、ジャレットらの成果を踏まえながらもしかし誰にも似てはいない、厳しく険しく硬化した面持ちの圧倒的ダイナミズム表現であったり、よりマイルドな牧歌的ロマネスク・スタイルがいつしか軽妙小粋なファンキー文脈へ推移する寛ぎめ路線であったり、内的情景の奥底へじっくりと降りてゆくアンニュイ&メランコリックな憂きリリシズム趣向であったりと、筆致は適宜刻々と変化するがほぼ一貫してある種の覚醒した理知性や心象風景の深きをスケッチするような瞑想感がその根っこに息づいたイメージの、翳りあるビタースウィートな語り口には揺るぎないオリジナリティがしっかり認められ説得力も充分だ。
01. 曇り空
02. 洞窟
03. 照らす
04. アルコールジェル (Alcohol Gel)
05. 間奏曲I (Interlude I)
06. 棘
07. Normal Temperature
08. 間奏曲II (Interlude II)
09. 昨日の雨
10. 夏の駅
11. かけら
*all songs written by Ami Ogaeri
魚返 明未 (piano)
高橋 陸 (bass)
中村 海斗 (drums)
ReBorn Wood Studios(東京都板橋区本町)録音
2024年日本作品
レーベル:
ReBorn Wood (リボーンウッド株式会社)
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国内制作・見開きデジパック仕様CD