★地道に年季を重ねて中々豊かな風格と確たる信念そして風流な軽みを感じさせるようになってきた正統派モダン・アルトサックスの人気才媛:纐纈歩美(1988年生まれ、岐阜県土岐市出身)の、5年半ぶり・通算9作目のリーダー・アルバムにしてセルフ・プロデュース第二弾となる本盤は、佐藤浩一(p)、安田幸司(b)、安藤正則(ds)、というこの顔ぶれで10年目に入った鉄壁不動のレギュラー・カルテットによる、入魂の自作曲集。
★繊細で端正かつしなやかな張りや伸びを呈し、しかも一切リキんだところのない滑脱なる鳴り様を見せるアルトサックスが、奥深い詩情や耽美的ロマンティシズムをあくまでバップ&ブルース(時にはクール・ジャズ)の言語を使ってニュアンス豊かに表現する、といったイメージの憂愁溢れるメロディック・プレイを流れるようにたおやかに綴って、瑞々しくも余情に富んだ中々懐の広い魅力を放ち、堅固で揺るぎなげな硬質ピアノや縦横無尽に的確な機動遊撃を掛けてくるドラム&ベース、らの活躍も大いにスリリングながらピタリとツボにハマりきった、何より主役アルトのひたすらスムースに渦巻きを描く感じの流麗吹鳴が躍動感とともに妙なるリラクゼーションをも齎して、快適に憩わせてくれるさりげなく練達した無駄のない好演内容。
★今日流らしくリズム・スタイルは多様に変移するが、何より先ず歌心と律動的ノリのよさを重んじる、ブルース・フィーリングも潤沢に備わった現代型ハード・バップ・ジャズの正統、そしてアクティヴ抒情派路線の正統らしい至って明快な娯楽的行き方が歯切れよく続き、リズム・セクションの確固と骨芯の据わった鉄板のダイナミック鳴動にガッチリ支えられつつ、纐纈(as)の、どこまでもふんわりスイスイと遊泳を愉しむかのような丸み&軽みあるアドリブ妙技が、終始ゆとりを残した爽やかな冴えを示して清々しい限り。
→大雑把に捉えるなら「チャーリー・パーカー(バップ)発ウエストコーストorクール派経由アート・ペッパー(またある時はリー・コニッツ)行き」とも云うべき芸風が抜群のフレッシュネスを軽々発揮して実に颯爽としており、いかなる局面にあっても決して肩肘張らず脱力感を絶やさない、しかも美旋律センスの卓越したデリシャス・フレーズを悠然と紡ぎ続ける、殊の外親しみやすくも含蓄深い語り口がチョチョイのチョイっぽく"完成の域"を実感させる絶好調ぶり・鮮麗ぶりを(ちょっと飄々と?)湛えていて全く見事。ソリッド&スクエアーな硬派バップ弾奏で座を引き締める佐藤(p)の助演もナイス。
1. Quiet クワイエット
2. Limpid Flame リンピッド・フレイム
3. M's Day エムズ・デイ
4. Leap リープ
5. Ginkgo ギンコウ
6. Daze デイズ
7. Move ムーヴ
8. A Little Boy ア・リトル・ボーイ
all composed by Ayumi Koketsu
纐纈 歩美 (alto saxophone)
佐藤 浩一 (piano)
安田 幸司 (bass)
安藤 正則 (drums)
2024年日本作品
レーベル:
Pony Canyon
在庫有り
国内制作CD