CATFISH RECORDS

★川下直広や波多江崇行らとの即興競演など、福岡で活躍を続ける急進派の辣腕ドラマー：武井庸郎(1966年大分県別府市生まれ)の主導する、テナーサックス(石合弘通)＆ベース(アックス小野)とのアルバート・アイラーに特化した演奏(本盤ではアイラーの代表曲6曲と完全フリー即興2曲が聴かれる)を展開推進する新生トリオ・プロジェクト＝We Stand Freeによる一作。

★ダイナミズム全開で烈しく荒々しくも敏捷にグループ全体を鼓舞するかの如きドラムの轟鳴も絶えず頼もしげに睨みを利かせ続ける中で、ワイルド&スピリチュアルな爆発的雄叫びを上げる屈強テナー吹鳴がスカッと壮快に華を成し、強烈にバネを効かせてボヨヨンボヨヨンとウネり波打つ分厚いベースの躍動も、圧迫力充分な追い上げ様を見せた、全編アイラーの音楽世界に深いオマージュを込めつつこれをフレッシュな現代感覚で新解釈した渾身熱演が連続し、胸のすく興奮と感動が味わえる会心打内容。

★いささか古典的とも云える硬派スピリチュアル系フリー・ジャズのオーソドックス・スタイルに乗せた、大衆娯楽的人情味と激烈パッションみなぎるダイナミック・スウィンギン・アクション敢闘がエネルギッシュ&エモーショナルに力強く展開され、アイラー曲をレパートリーにはしているものの殊更に本家に似せようとはせず、三者いずれも自然体な自己流儀で再創造を試みる、といった演奏姿勢が好もしい今日ムード・清新ムードの醸成にも繋がっている、がしかし頑として悔いなく(一切妥協せず)完全燃焼するアツい道程の中で、一座の花形:石合(ts,ss)を筆頭としつつ各人にバランスよく見せ場の振られたソロ・コーナーが、こってり濃厚な盛り上がりを呈してゴキゲンだ。

★石合(ts,ss)の、フリーキー・トーン交じりで過激にスピーディーに暴れ倒す風なヴァイオレント咆哮とかにはアイラーを彷彿とさせるところもあるが、トータルなアウトラインとしてはアイラーのスピリチュアリティを踏襲しながらもアイラー的ヴァイブレーションに比べよりしなやかでストレートな張りや伸びを湛えた鳴音に、鮮度抜群な独自の妙味があり(加えて、これは当ユニット全体に関してだが、アイラーのバンドに顕著だった"奇形の祝祭性"とも云うべき傾向がこのグループの場合比較的希薄になっている)、殊にソプラノに持ち替えた#6辺りでのアイラーから離れた繊細な哀愁浪漫描写の瑞々しさが秀逸。

★また、小野(b)の、弓弾きでジワジワ迫るところの奥深い情魂味とコワモテな凄味の入り混じった気魄のあり様が圧巻だったり、武井(ds)の、色彩感豊かにドシャバシャと忙しなく遊撃してくる野獣の如きゲリラ戦法にも獰猛かつ芳醇な魅力があったり(ちょっとサニー・マレイ似か)と、個人プレーの聴きどころは極めて充実している。全体的な音楽観はアイラーだが和製・日本人ということもあり1960年代の山下洋輔とかの楽想に通じる趣もある。

1. Change Has Come
2. Ghosts
3. Improvisation 1
4. Spirits
5. Improvisation 2
6. Saints
7. Truth Is Marching In
8. Our Prayer
＊all composition was written by A.Ayler except 3,5(Takei,Ishiai,Ono)

石合 弘通 Hiromichi Ishiai (tenor saxophone except 6) (soprano saxophone on 6)
アックス 小野 Ax Ono (bass)
武井 庸郎 Tsuneo Takei (drums)

2022年11月6日福岡Studio BEBOP(福岡県糟屋郡新宮町上府北2丁目)録音

レーベル：Ito Music Cultivation Factory(自主製作)

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国内自主製作・紙ジャケット仕様CD
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