★過去30数年来ドイツの主流派ジャズ・シーンで活躍し、LaikaやMons、Sound Hills等から良質のアルバム群を着々と発表して好評を得てきたヴェテラン・ピアニスト:クリストフ・ゼンガー(1962年旧西ドイツのヴィースバーデン生まれ)は、かねてより日本のミュージシャン達とも交流を重ね共演レコーディングも残していたが、今回もまた、旧知の加藤真一(b)に利光玲奈(ds)という日本勢と組んだトリオによる、埼玉県入間市の入間ジャズクラブでのライヴ編。
★歯切れよく硬質骨太な堅牢さと重み(〜重心の安定性)を有したストーン・タッチのピアノが、鋭角的な殺陣風のバップ・イディオム奏法を先ずは基軸として道筋をシブく固め、そこへピーターソン辺りにも底通する半アクロバティカルなファンキー・アクションを滑り込ませて賑々しく座を盛り上げたり、エヴァンスもしくはモード系に幾分か寄ったスマートな詩情描写で落ち着いたエレガンスを高めたり、などの転回も織り混ぜ上手くメリハリをつけつつ、トータルとしてはあくまで明快で親しみやすい人情肌エンタテインメントの真骨頂とも云うべきリリカル・スウィンギン・プレイを闊達げに紡いで、胸のすく清々しい魅力を放ち、ブルージー&スピリチュアルによく唄うバネとウネりの効いた肉太ベースや、色彩感満点に威勢よくビシビシ遊撃してくるダイナマイト・ドラム、らの機動的サポートもガッチリ頼もしくノリとスリルを強化した、全編ひたすら晴朗でおおらかな驀進が続いてスカッと昂揚させてくれるクリーンヒット的好内容。
★歌心とスイング感を何より大切にし、ブルース・フィーリングも豊富に備わった、ハード・バップ系ピアノ・トリオの本道ド真ん中たるとことんシンプル・ストレートな娯楽活劇調の快進撃が続き、雄弁にしてどこか思索性ならびにユーモアも感じさせる加藤(b)や、分厚い体当たり的アタックとシャープ&スピーディーな斬り込みワザを的確に使い分ける利光(ds)、らの活躍にもしっかり見せ場が用意されるカラフル&半ドラマティックな行き方の中で、そうした彼らサイド陣に度々道を譲る王者の余裕を見せながらしかしやはり花形主役然と猛ハッスルするゼンガー(p)の腰の据わったアドリブ攻勢が、何とも豪胆に、清やかに大豊饒地帯を創出してゴキゲンだ。
→基本的には強固でソリッド&スクエアーな立ち回りの型に徹するような硬質バップ文体と程好くハッタリ(〜ケレン)の利いた音数の多いアーシーなダイナミック・アクションの掛け合わせ、=即ちO・ピーターソンの影響を感じさせるバピッシュ・ブルース派の本道らしい明朗で粋渋なスペクタクル・アプローチを身上とし、序盤とかではエヴァンス寄りの耽美スタイルに転じながらもエキサイトしてくるといつしか手癖が出て本性のファンキー・バップ路線へ戻ってしまう、辺りの展開も好もしい妙味を醸している(あと、"ファンキー"と"クラシック・ピアノ"のブレンドぽい奏法がちょっとルイス・ヴァン・ダイク似に聞こえてくるところもまた興趣充分)が、終盤になると中々制御力も増してきて、ハンコックやマッコイをクール化したようなモード手法を貫く#7、端麗優美なロマンティストに徹しきったバラード#8、などにさすが熟練した芸幅の広さ・懐深さが窺え、とは云ってもその個性の根幹は"豪快さ"にこそある、というそうした弾鳴には理屈抜きで胸躍らされる確固とした魅惑力がある。これは痛快。
1. I Mean You (T. Monk)
2. Autumn Leaves (J. Kosma)
3. Take The A Train (B. Strayhorn)
4. Kinderszenen No. 1 (R. Schumann / C. Sanger)
5. Las Brisas (C. Sanger)
6. I Loves You Porgy (G. Gershwin)
7. Voyage (K. Barron)
8. Stars Fell On Alabama (F. Perkins)
クリストフ・ゼンガー Christof Sänger (piano)
加藤 真一 Sinichi Kato (bass)
利光 玲奈 Rena Toshimitsu (drums)
2023年4月埼玉県入間市、入間ジャズクラブ(Iruma JazzClub)でのライヴ録音
2023年ドイツ作品
レーベル:
Laika
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三つ折り紙ジャケット仕様CD