★ジュリアード音楽院でケニー・バロンに師事し、ニューヨークを拠点に活動、これまでは、複数の管楽器を入れたコンボによるセミ・ラージ・アンサンブル的なアレンジ若干重視のオーケストレーション志向アルバム、に高い評価を得てきた現代ピアノの才媛:加藤真亜沙の、今回は趣向を変えてピアノ・トリオ+パーカッションという小編成でシンプルな直球勝負に出た六本木アルフィー・ライヴ。
★きめ濃やかで端正、かつ爽涼でクリーンな潤いや透明感を湛え、同時に歯切れのいいシャープネスを示すところもある、ニュアンスに富んだ鮮明タッチのピアノが、甘美なロマンティシズムと激烈なダイナミズムをガッチリ共存させ、更に粋なファンキー・フレイヴァーを含んだブルース的小節も豊富に滑り込ませて、トータルとしてはあくまで親しみやすいメロディックさを絶やすことのない抒情指向プレイを紡ぎ、フレッシュにして吟醸性充分の清やかな魅力を放ち、色彩感溢れる賑々しいパーカッションや、こってり濃い口のベース、そしてピアノとシンクロしつつ軽やかに繰り出される至ってソフト&スウィートな鼻唄スキャットっぽい本人のヴォイス(→これは過去作品にも見られた加藤のトレードマーク的な得意の芸風のようである)または優しいヴォーカル、といった周辺の要素もそれぞれに美味しい好アクセントを添えた、何より主役ピアノの殊の外スッキリとした吹き抜ける青嵐の如き弾鳴のあり様に、理屈を越えて心洗われ、胸のすく思いの好投内容。
★歌心とスイング感に潔く主眼を絞り、エレガント(=つまりちょっぴりよそ行き?)な面も多々あるが基本は気さくそうな人情味〜大衆娯楽性を堅持した、伝統的ブルース・フィーリング&バップ・スピリットも潤沢に備える徹頭徹尾明快晴朗でエンターテイニングなリリカル・アクション・タイプの進撃、が溌溂と意気軒昂に、加えて開放感をもって中々おおらかに、豪快に展開され、鋭くもモコモコとウネりドライヴする中林(elb,b)や、変幻自在にノリノリで全方位を駆け巡るKAN(per)、機略縦横かつ精確巧緻にバッチリ抑えを効かせる小田桐(ds)、らの活躍も各々華と旨味ある際立ちを見せる中で、彼らに上手く刺激されながら揺るぎなく堂々と花形主役の座を飾りきってのける加藤(p)の、終始ポジティヴな覇気がほとばしってくる感じの勇躍ぶりが鮮やかに冴えていて、全く爽快だ。
→曲想そのものやテーマ部分で自身のヴォイスを被せてくる辺りはコンテンポラリー色濃い独特の壮麗荘厳な優雅さが認められたり(幾分ポップなニューエイジ・ミュージックとかにどこか通じる趣や今日流のライトなソフィスティケーションが醸し出されたりもする)、またビート設計においては今時らしくリズミカルな半舞踏的スタイルが多用されそこでも現代流のリズム感の卓抜さが遺憾なく発揮されるが、ソロ・パートの大半では一転して結構ストレートアヘッドなメインストリーマー=ハード・バッパー気質のブルージー・スウィンギン妙技がイキに炸裂しており、ハンコックやエヴァンスの線を細めて、よりダウン・トゥ・アースでソウルフルな漆黒のファンキー傾向を強めたような、時折織り混ぜられる玉転がしタッチも好もしく(生粋)バップ・ピアノの本質に迫るそのコク深い音キャラは、大いに芳醇で説得力も満点。
1. Departure
2. Uragami
3. Ishonsho Abe
4. Sol
5. Kinmok-Sailor
6. After The Rain
7. Small Sky 小さな空 (武満 徹)
加藤 真亜沙 (piano) (voice on 1,2,3,4,6) (vocal on 7)
中林 薫平 (bass on 1, 2) (electric bass on 3,4,5,6,7) (possibly synthesizerっぽいelectric楽器? on 4)
小田桐 和寛 (drums)
guest:
KAN (percussion on 2, 3, 4, 6)
2023年1月14日 六本木アルフィーでのライヴ録音
レーベル:
LIVE at alfie
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