★多方面で精力的に活躍中のキャリアある中堅実力派ピアニスト:石田衛(1978年生まれ、東京都江戸川区出身)の、今回は小牧良平(b)&中村海斗(ds)の若手精鋭陣と組んだトリオによる、12年ぶりのリーダー・アルバム。
★折り目正しくきめ細か、それでいて角張った固さ・堅牢さも備わった、キレのある鮮明ストーン・タッチのピアノが、バップもしくはモードに根ざした硬質ダイナミズムとブルース由来の吟醸テイストの掛け合わせ語法を根幹とし、そこへ歌謡的マイルド節も程好く投入してほぐし効果を齎し、トータルとしては親しみやすいが甘すぎず殺陣アクションのソリッド&スクエアーな迫力・真剣味を絶やすことのない鋭利敏活プレイ、を精悍かつ粛々と綴って凛々しくもウマみ充分な、輪郭のクッキリした歯切れよくイキのいい華を成し、重心の据わった安定律動性と激烈自在なゲリラ的奇襲力を併せ持ったドラム&ベースの幅のある闊達サポートも、グルーヴとスリルを的確に創出して頼もしい魅力を際立たせた、全体を通じ至って真っ当な現代流ハード・バピッシュ・ピアノ・トリオの本道を突き進む快演が続いて、スカッとノリよく昂揚させてくれる会心打内容。
★硬派で雄々しくちょっと武骨ながら歌心や詩的ロマンティシズムにも決して事欠かない、娯楽活劇路線の鑑とも云うべき至極ストレートアヘッドなダイナミック・スウィンギン奏演が意気軒昂そうに展開され、規則正しく精確にきっちりスイングしながら同時に不規則に浮遊しているようなところもある殊の外芸達者な中村(ds)や、図太く重みをもって雄弁にウネり波打つドライヴ感満点の小牧(b)、らの中々超絶なバックアップにガッチリ支えられ、触発されて、彼らの万能ぶりに比べいい意味でちょっと不器用げな律儀一徹さを感じさせる石田(p)の、一切ブレるところのない結構ハードでストイックともとれるアドリブ妙技が頑として確たる冴えを、キレを見せて秀逸だ。
→基本は強固で鋭角な力学指向の立ち回り攻勢を変らぬ旨とし、パウエルを出発点とするバップ・ピアノの伝統スタイルを幾分ソフト化した風な行き方であったり、ハンコックやエヴァンスの奏法を消化した上で敢えて甘さを削ぎリアル・アクションに力点を特化したハードボイルドなアプローチであったり、などのストロングな驀進アタック!に先ずは遺憾なく本領が発揮されているが、その一方、バラードや和みボッサ調の局面にあっては涼やかでデリケート&メロウな機微ある耽美派ロマンティストぶりを垣間見せたり、時にはテイタムやピーターソンをモード方向へ引っ張ったような起伏烈しい曲芸を披露したり、かと思えばR・ガーランドを思わせる玉転がし的軽涼ブロック・コードの粋な寛ぎファンキー小唄っぽい歌いっぷりをインサートしてきたり、ブルース・ナンバーでは腰を据えて地の底へじっくり降りてゆくような漆黒のコクを宿したダウン・トゥ・アース&ソウルフルな唸るが如き憂歌節に揺るぎない深み・濃さがバッチリ認められたりと、総じて、その根っこには堅固強硬な殺陣主義が底流するものの、ディテールをよく聴けばジャズ・ピアノの歴史を広く網羅したわりかし多彩な芸風が示されていて、説得力充分。
01. Minor
02. チャッチャー
03. Donfattan
04. Crucian Carp Waltz
05. Mr. Airhead
06. Leo
07. Afterglow
08. SMNY-EKD
09. ピアタム
10. Blues For AH
石田 衛 Mamoru Ishida (piano)
小牧 良平 Ryohei Komaki (bass)
中村 海斗 Kaito Nakamura (drums)
2022年12月8日-9日NK SOUND TOKYO(東京都新宿区四谷4丁目)録音
レーベル:
Days of Delight
在庫有り
国内制作CD