CATFISH RECORDS

★スウェーデン・シーンで活躍し、これまでDragon、Volenza、ESM、Nilento、Ladybirdから着々とアルバムを発表して評判を上げてきた女性歌手＆ソングライター：ハンナ・スヴェンソン(1986年スウェーデンのファルケンベリ＝Falkenberg生まれ)の、今回は、過去盤でも共演していたヤン・ルンドゥグレーン(p)や父親のエーヴァン(イーワン)・スヴェンソン(g)と再び組んだカルテット伴奏での一編。

★透明感と爽涼な潤いに満ちたトーンやや高めの濃やかで折り目正しいクリーン・ヴォイスによる、歌詞とメロディーをあくまで大切にして一節一節・一声一声をしっかりと噛み締め、魂をこめて丁寧に語りかけてくるような、それでいてジャズ・ヴォーカルならではのダイナミックなグルーヴ表現やブルース由来の吟醸感の創出、にもごく自然に抜かりないところを見せる、トータルとしては極めてオーソドックスなリリカル・タイプの正統らしい落ち着いた、かつまた北欧特有の幾分ヒンヤリしたクール派っぽい風合いも巧まず加えられる徹頭徹尾テンダーな演唱が、聴いていて心洗われる気分の清らかな魅力をじっくりしっとりと揮い、バップ色濃い硬質グルーヴィーなピアノやバップとブルース・ロックの間を往来する風なギターら、演奏陣の骨芯にブレなき敏活プレイの数々も芳醇なる妙味を放った、全般にその歌・音に顕れる丹念な誠実さ、真心のあり様に瑞々しく胸打たれる感動的好内容。

★インティメイトな和みムードとキリッとしたシャープな歯切れよいノリとをおのずと兼備した、現代抒情派ヴォーカルの一典型を示す至って平易で親しみやすい行き方が続き、ボブ・ディランのカヴァーとなる#3を除いては全てH・スヴェンソン本人の作詞・作曲・編曲による、そうしたレパートリー(ディラン曲も含めてちゃんと統一感がある)から立ち昇ってくるコンテンポラリー・スカンジナヴィアンらしい仄かな半牧歌的フォーキー風情〜旅情っぽさも爽やかに、スヴェンソン(vo)の繊細で柔和な肩肘張らないマイルド・リラクシング節がその細部までよく行き届いた端正な冴えを見せて素晴らしい。

→リキみを解いたナチュラルな息遣いで中々奥ゆかしく謙虚に、真摯に切々とつぶやくが如きメロウな節回しは、思わずうっとりさせられる耽美的でロマンティック&ファンタジックこの上ない蠱惑力に溢れており、と同時に自ずと背筋の伸びた凛々しさや北欧の鋭く冴えた冷涼な空気を吹きかけるような張り(とキレ)のあるクールネスをも体現した、伸びやかでいて決して節度や気品を失わない歌声のあり様は何げに小粋瀟洒の極みで全く卓越している。

★スクエアー・バピッシュ&アーシー・ソウルフルなソリッド感あるルンドゥグレーン(p)の粋渋弾奏や、バップ・ギターの伝統的スタイルと今日流ファンク調の間を自在に横断するエーヴァン(g)の劇的活躍、もそれぞれバッチリ高得点。

1. Today Is Gonna Be A Better Day (Hannah Svensson)
2. Crossroad (Hannah Svensson)
3. It's All Over Now, Baby Blue (Bob Dylan)
4. The Other Way Around (Hannah Svensson)
5. The Two Of Us (Hannah Svensson)
6. Time To Go Home (Hannah Svensson)
7. We'll Get Through (Hannah Svensson)
8. Carry On (Hannah Svensson)
9. Little Friend (Hannah Svensson)

Hannah Svensson ハンナ・スヴェンソン (vocal)
Ewan Svensson エーヴァン・スヴェンソン (guitar)
Jan Lundgren ヤン・ルンドゥグレーン (piano)
Matz Nilsson マッツ・ニルソン (bass except 1, 2, 5, 7) (electric bass on 1, 2, 5, 7)
Zoltán Csörsz ゾルターン・チェルス (drums)

2021年12月スウェーデン-マルメのギューラ・スタジオ(Gula Studion)録音

レーベル：Ladybird

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デジパック仕様CD